閑話 3人パーティー
ヒーラーであるユリがパーティーを離脱したことでマルス率いる勇者パーティーは冒険者ギルドに集まりその事について話をしていた。
「ねえマルス、ユリがパーティーを辞めたわけだし、そろそろ新しいヒーラーを探した方がいいんじゃないかな?」
「うん私もそう思う、あんたも少しは治癒魔法を使えて自己回復もできるだろうけど、やっぱりヒーラーがいないとランクの高いクエストの攻略は難しいよ」
「確かにヒーラーの加入は急がなくてはいけないが、ユリほどとなるとなかなかな……」
ユリの代わりのヒーラー加入を急がなくてはいけないとマルスは理解しているものの、ユリほどの能力を持ったヒーラーが簡単に見つからないのもまた事実であり、後任探しは難航しているのだ。
「ねえユリって確か私達のパーティーを抜けてあの『青龍の翼』に入ったんでしょう?あそこは新人冒険者が多いけど、すごい勢いでランクを伸ばしているって」
「ああ、そうだな、だが俺達に追い付くのはまだまだだな」
「それで、なんで私達のパーティーを抜けてわざわざそのパーティーに入ったかとかって聞いていない?」
サラより、何故自分達勇者パーティーを抜けて、青龍の翼に入ったかを問われたマルスは当時のユリの言葉を思い出していた。マルスは勇者パーティー、そしておおよそ直近の低落はもはや勇者の呈をなしてなく、落ちていく一方と断言されて、強くなる可能性のある青龍の翼の面々に守ってもらう方が良いと訴えられた事。
その事は自分のプライドにかけて言えない事、更にはユリは青龍の翼のメンバー達とも関係を持った事を彼らの発言から察しており、その事実もメイ達にはなかなか告げにくい話だ。
「ああ、ええっとなユリの幼馴染の兄貴があの青龍の翼のメンバーにいてよ、その幼馴染に頼まれた事をユリから相談されたんだけど、それじゃあしょうがないなって事で許したんだよ。まあユリの友達思いの気持ちは無下にできないからな!うん!」
もちろんこれはマルスがメイ達に理由を尋ねられた時に答えるためにあらかじめ考えた話であり。実際はそんな事実はないのだ。だがその話を聞いてサラはマルスに問いかける。
「本当に?」
「サラ?」
「本当にユリがあんたにそう言って、あんたは私達に何の相談もなく決めたの?前に私を加入させるためにリッキーっていう剣士を追放する時には事前にメイ達に話をつけたのに?」
「……ああ、そうだ!仕方ないだろう!お前の加入はパーティーの強化の為!ユリは個人的な事情だし!同じようには考えられないだろう!」
「ふうん……、まあいいわ、それよりも早く新しいヒーラーを見つけてよ、別にユリほどでなくてもいいから」
一見納得したように見えてサラの疑いの眼差しはまだマルスに向けられていた!勇者パーティーはマルスの行動により亀裂が走っていた。




