スキルの弱点
ケイトが明かした攻撃を避けるスキルの名は幻惑の足取りであり、相手に幻覚を見せてさも自分はその場から一瞬で動いたように見せるスキルである。
以前の魔物討伐を巡る模擬戦では俺は奥義を発動させてスキル発動そのものを妨害したが、ケイトのスキル、というより幻覚と実体を見分ける方法は事実上まだ付き合いの長いイザベルでさえ分かっていないのだ。
「なあシーナ、お前は俺達と違って魔法の素養はあるんだし、魔力の感知とかでケイトの幻覚を見破れないのか?」
「それがケイトさんのスキルっていつ発動しているか分からないんです、魔法なら魔力感知で分かるかもしれませんが、スキルも魔力を消費しているとはいえ勝手が違うんです」
「ジョーン、スキルの発動にも魔力を消費する必要はあるが魔法のように魔力を発することなく使用する事もできるから感知というのは難しいかもしれないな」
とはいえ、スキルの発動にはほとんどの場合使用者に何かしらの変化が起きているがケイトの場合変化は起きていない。つまりどこかのタイミングでスキルを発動させ実体は別の場所に既に移動している可能性もあるのだ。これは攻撃する側からすれば無駄に体力や魔力を消耗してしまう状況だ。
「ケイト、確かにそのスキルを見破る方法は私でも分かりません、だけどケイト、そのスキル発動中には明確な弱点がありますよね」
「さすがねイザベルそれに気付いていたのね」
スキル発動中の弱点?確かに実体を見えなくするのに何のリスクもないのはおかしいからな。だけどスキル発動中の弱点って一体……。
「だけど、その弱点を考慮してもこのスキルの使い勝手はいいからね、それよりイザベル剣の稽古ではお得意の遠隔スキルが使えないでしょう」
「ケイト、お忘れですか、私だって接近戦が苦手なわけではないのですよ」
そう言ってイザベルはケイトに対して再度攻撃を仕掛ける。しかしやはりいつの間にかスキルを発動していたようで攻撃はあたらないでいた。
そして今度は死角からイザベルに対し攻撃を仕掛けるがイザベルは木剣でケイトの攻撃を防ぐ。
「またケイトさん、攻撃をよけたというか当たらないというか」
「だけど姿が見えねえんじゃあ、その隙に攻撃を仕掛けりゃあいいのによ」
ん?確かに実体は別にあるなら死角から攻撃すればさっきは防がれたが幻覚があるならそれにも気を回さなくてはならないし攻撃が成功する確率は上がるはずだが……!
そうか、もしかするとスキル発動中はなにか理由があって攻撃できないのか、それがスキルの弱点か。