分かってもらう為に
村長より領主様の使者が村にやって来たと聞き、俺はケイトとイザベルの聞き取りに同席する為にケイト達と共に村長の家に向かっていた。
「いよいよね、というかまさかこんなに早く話を聞きに来るとは思わなかったわ」
「ええ、罪に問われたのは旦那様だけで、その後私達は捨て置かれましたから、どのようなつもりかは不安ですけど」
「私だってそうよ、財産さえ没収すれば私達は無力と思われたからこそ捨て置かれたとも思っていたし、だけどこれは陥れた裏切り者を見つけるいい機会でもあるからね」
何としても裏切り者を見つけて落とし前をつけさせてやりたいというケイトの強い思いが近くで歩く俺には伝わって来たな。
「それに、師匠がドラゴン退治で信を得ているし、ここは少し安心できるところかな」
「御師様、御師様にもお手を煩わせてしまいますがよろしくお願いします」
「2人が自分達の事を俺が信を得ているならって事で話しただけだが、ここでもできる限りの事はするさ」
「お願いね」
自分の父親や自分達のこれからがかかっているし、少し2人にとってはこの俺にもかなりすがる思いが強いんだな。
まあ俺にできるのは2人から聞いた話の補強と、実際にこの目で見た2人の魔物討伐の活動から感じた事をユウさんに伝える事だな。
そう考えていると、村長が使者達の姿を目にして俺達に声をかける。
「みんな、使者の方々じゃ、もうわしの家の目の前におるわい」
領主様の使者が既に村長の家の前にいることを聞くと、俺達も使者を目にする。そこには以前俺が道場建設の際にお世話になったユウさんがいた。
「村長、リッキー殿達をお連れしてくれたのだな感謝する」
「いえいえ、ささ、わしの家をお使い下され」
村長に促されるとユウさんと一部の兵は家の中に入り、残りの兵は外で見張りをしてくれるそうだ。
「さあ、俺達も入ろうか」
「ええ」
「はい」
俺達も村長の家に入り、それぞれがテーブルの椅子につくと、まずはユウさんから口を開いた。
「さて、早速だが本題に入ろう、貴殿がヴァイツ家の令嬢であった者だな」
「はい、キャスリン・ヴァイツと申します!師であるリッキーの勧めで領主様に我が父であるヨーロ・ヴァイツの冤罪証明ならびにその冤罪を生み出した者への捜索依頼をお願いしたく参上した次第でございます」
「キャスリン・ヴァイツに使えるイザベルと申します。私も心持ちは主と相違なく参上した次第にございます」
まずはユウさんにこの2人の事をどれだけ分かってもらえるかだ、とりあえず俺は1度様子見だな。