イザベルの不安
ケイト達から直接父親が投獄された話を聞きたいという事で領主様より使者のユウさんが俺達の住むパルプ村へと派遣される知らせを受けた翌日、慰問から帰って来たケイト達に俺は話をしていた。
「そう、明日にそのユウさんっていう使者がおいでになるのね」
「ああ、また村長の家を使う事になるだろうな。俺も同席はするがケイト達から詳しく聞きたいだろうしな」
「分かってるわ、それじゃあ明日も早いし今日はもう休むわね、イザベルあなたは?」
「私はもう少し御師様からいろいろ聞いておきたいので、ケイトは先にお休みください」
イザベルはまだ俺に聞きたい事があるそうでそれを聞いたケイトは一言発してから自分の部屋へと戻って行く。
「そう、じゃあおやすみ」
「おやすみなさいませ」
ケイトが自分の部屋に戻って行くのを確認するとイザベルは口を開き、俺に尋ねる。
「御師様、御師様はそのユウという方にこの道場建設の際によくしていただいたから信頼なさっているのでしょうけど私は正直申し上げるとまだ半信半疑といったところです」
「半信半疑か、まあそれは無理がない事だと思うし、特にケイトは父親を投獄されたわけだからな」
「こちらの領主様の文にしても御師様の手前そうおっしゃっているだけで当主が罪人のヴァイツ家の娘、そしてその従者の言葉を信じるかどうか不安で仕方ありません」
ケイト達にとって第三者に身分を明かしたのは初めてでそれがイザベルにとっては不安になっているのが伝わってくるな、そんな中話を聞いていたジョーンが口を挟む。
「なあイザベルよ、不安なのは分かるがお前だって希望を感じてこの話にのったんだろう、それならケイトみたいにどんと構えていろよ」
「ケイトも内心は不安なのでしょう、御師様から少しお話を聞いて早めに切り上げておやすみになられたのは心が不安に支配されない為のいわば防衛行動に他ならないのですから」
「そうなんですね、でもイザベルさんが不安を隠せなかったらケイトさんももっと不安になるんじゃないんですか?」
「え?……私はケイトを守る為に付き従ってきました、でも今回は守り切れるような事では……」
イザベルも目の前の危険に対しては命がけでケイトを守る為に奮闘してきたんだろうけど、信じるかどうかのフォローまではできないんだな。
「イザベルさんの不安はきっと師匠がフォローしてくれますよ」
「え?」
「何で俺が?」
「師匠はケイトさん達が魔物討伐に命がけで臨んでいたのを間近で感じていましたよね、しっかりとケイトさん達が力のない人達の為に命をかけられることを訴えればユウさんならきっと分かってくれますよ」
結構楽観的な考えだが、ただ同席するだけではなく、俺にもケイト達の為にできる事があるというんだな。




