新しい知らせ
領主様の文の返事を村長より受け取った俺達は村長宅をあとにし、道場へと戻って行った。
「ただいま」
「あ、お帰りなさい師匠!ケイトさん、イザベルさん」
「村長、何て?」
一度、俺はケイトと目配せをしてからシーナ達にも領主様の文を見せる事を決める。
「シーナ、ジョーン、2人にもこの文を読んで欲しい」
「はい、これは領主様の文⁉」
「近々、使者が派遣されるのか⁉」
領主様の文を読んで2人もおおよその事情は理解し、それに関してケイトが反応を示す。
「師匠、シーナちゃん、ジョーン、みんな本当にありがとう、私達だけではここまでたどり着けていたかどうか」
「とりあえず使者の人がケイト達の話を聞いてはくれるようだし、ここからはケイト達が信じてもらえるかどうかだぞ」
「そうね、もうヴァイツ家そのものが汚名を被らされたからその名だけで罰せられてもおかしくないものね」
「ケイトさんのお父さんは実際は悪い事はしていないんですし、本当の犯人が見つかればきっと大丈夫ですよ」
確かにケイトの父は利用されただけだろうが、肝心の犯人探しも難しいだろうな、公に探る事ができない以上、手掛かりすら見つけていくのは大変だろう。
「ありがとう、シーナちゃん、よし使者の人が来るまで剣の修行をしながら待つわよ!」
少し希望が見えて来たのか、ケイトはいっそ稽古に張り切る姿勢を見せてくれた。
それから数日が更に発ち、村長が道場を訪ねてきた。
「邪魔するぞ、リッキーさん、ケイトさん達はいるかの?」
「ケイトとイザベルなら昨日からある村での慰問活動に行っている。そこでまた踊りと演奏を披露して明日にはこっちに戻ってくると」
「そうか、それならちょうどいいのお、2日後には領主様の使者、前に道場建設の時に来たユウさんが来られるようじゃ」
「そうなのか、分かった!ケイト達が帰ってきたらその事を伝えておく」
「頼んだぞ」
そう言って、村長は道場をあとにし、村長の話を聞いたシーナとジョーンが俺に声をかけてくる。
「良かったですね、あのユウさんならきっとケイトさんの事を信じてくれますよ」
「どうだかな、隠れながらとはいえ、一領主にどこまで国の方針と真逆な事ができるかね」
「だけど悪い事をしていない人が捕まるのはおかしいです、本当の事がちゃんと分かればケイトさん達だって」
俺もケイト達の話を聞いたからこそ、この提案をしてみたんだ。とりあえず使者の派遣というのは今までの事を考えればケイト達にとっては大きな1歩のはずだ。