別の提案
ケイトの父親に他国への武器の横流しの濡れ衣を着せた商人はジョーンによれば現在の所属商家と共に、他国の間者と繋がっているのではないかと告げる。俺もその可能性が高いと踏んでおり、今のやり方での捜索を勧める事はできないな。
「まあ、国家が相手となるとお前達が挑んでも死ぬだけだ。ここは別の方法を……」
「別の方法?どんなのがあるの?」
「え?そ、それは……」
「確かにあなたの言うように相手の国が仲介しているのならば、危険が多いかもしれないわ、でもこのままじゃあ父は投獄され続けて、一生罪人の汚名を着せられるのよ、私はそんなの耐えられない」
別の方法を具体的に勧められないジョーンに対してケイトは反論をし、どうにかして助けたいと強く訴え、更にイザベルも続く。
「私も同じ気持ちです、父が守ろうとしたヴァイツ家をこのような形で終わらせてはいけません!」
「いずれにしても母のお世話をしてくれてる教会へのお礼金は必要だし、私達には犯人を捜しながら旅を続ける以外の選択肢はないわ」
自分達にはそれ以外の選択肢がないと言い放ち、その話を聞いたシーナがこっそりと俺に声をかける。
「師匠、どうにかして安全にケイトさん達をひどい目に合わせた犯人を捜す方法はないんですか?」
「そうは言ってもなあ、さすがに間者もいるとなると相手側も何かしらで守られそうだしな」
こんな時に俺が勇者パーティーの一員なら、マルスの名のもとでギルドを動かす事ができたかもしれないが、今の俺にこの問題に介入する権限はないと言っていいな、せめて国ともまだ繋がりがあれば……、いや待てよ!もしかしたら……。
「ケイト、イザベル、もしかしたら君達が危険を冒さずに犯人を捜す方法があるかもしれない」
「何ですって?」
「それはどのような方法なのですか?」
「実はさ、俺ドラゴン退治をした後に領主様に元冒険者って事がバレちゃったんだよ」
領主様が俺の素性を知ったうえで詫び代わりに報酬をはずんでくれたし、ケイト達の事を話せばもしかしたら……。
「領主様の遣いの人がいるし、その人に君達の事情を話せば協力を得られるかもしれない、国としても間者や他国に武器を横流しする商家や商人は放置できないだろうし」
「だけど、それはあなた達にも迷惑がかからない?もし私達の素性が相手に知られてつながりのあるあなた達にまで危害が及ぶことも」
「迷惑なんてことはありません、このままケイトさんだけで犯人を捜すのがよっぽど危険なんですから!」
「シーナちゃん……」
ケイトは俺の提案にどう反応するんだ?




