旅の理由
ケイトの父は他国に武器を横流しした事を罪に問われ兵士に連行されたうえ、ヴァイツ家は財産没収のうえ、取りつぶしになったのだ。だがケイトはそれは濡れ衣であると主張し、偽りの取引内容に承認してしまったのではないかと強調するも、実際に心当たりのある人物のほとんどが他の商家に行ってしまった為、消息がつかめないでいた。
「そういう事か、3年くらい前の話だし、言ってはなんだが、よくそんな状況から君達2人だけで生きてこれたな」
「いいえ、商人も職人も給金が払えなくなって私の元を去ってもイザベルとイザベルの父親は私の元に残ってくれたの」
「そうだったのか、頼りになる大人がいたとはいえ、それでも辛かっただろう」
「あのお、すいません、ケイトさんのお父さんが捕まったのは分かりましたが、お母さんはどうしてるんですか?それに、イザベルさんのお父さんも?」
この流れで母親の事に一切触れないでいたし、気になるよな。それにイザベルの父親が2人の面倒を見てたはずだからそれも知っておきたいよな。
「母は財産没収と父の投獄によって、心身ともに弱って、今はある教会で療養しているの」
「そうなんですか、お辛いですね」
「ありがとうシーナちゃん、私が生まれた時にお世話になった教会だったから、母もよくしてもらっているわ、それからイザベルの……」
「それは私から話します、父は教会へのお礼金、そして私達が暮らしていく為の生活費を稼いでくれたのですが、危険な仕事もしていたようで、その過程で……亡くなりました」
ケイトの母親は教会で療養中だったのか、ケイト達の事情を察して助けてやっているんだな。イザベルの父親は気の毒だがケイト達を助ける為に自らの命も賭けていたんだな。雇われていた商家がとりつぶしにあったにも関わらず、ケイトに尽くしてくれたこの親子はかなりの忠臣だな。
「私達が旅を続けている理由は2つ。1つは母が1日でも早く回復する為に教会にお礼金を渡して少しでもいいお薬を買う資金にしてもらう事、そしてもう1つは私達を追い詰めた商人を探す事よ」
「資金を稼ぐために踊り子や魔物退治をするのはまだ理解できるが、旅をしながらどうやって心当たりのありすぎる犯人を捜すんだ?」
「旅をしていれば商人のつながりの情報も入ると思ってね、そこをたどっていけば父や私達を追い詰めた商人がどこかでつながってくるはず」
「お前さん達の事情は分かった、だがよ、そのやり方じゃああんたら死ぬぜ」
ジョーン、そうだなジョーンの言うようにこのまま進むとケイト達の命は危ないな。