ケイトの素性
目の宝石を取りぬいた影響か、マジックゴーレムは魔法耐性だけでなく、石も俺達が解体できるくらいにはもろくなっており、俺達は目の宝石を依頼主のザックさんへの討伐証明としてもらい、残りの石はこの村で使ってもらう事になった。
「本当にあんたらのおかげで助かったわい、あのゴーレムが暴れたらこんな村なんぞひとたまりもないからの」
「それじゃあ俺達は帰るので、また何かありましたらご依頼ください」
「おお、ケイトさんもありがとな、踊りと演奏だけでなく、魔物退治にまで頑張ってくれて」
「いえ、踊りとかはみなさん喜んでいただけてなによりですが、魔物退治はほとんど彼らのおかげですので」
ケイト、あえて俺達を立てているというより、作戦失敗の原因を作った事をすこし引け目に感じているのか、まあ俺の作戦に穴があっただけなんだけどな、本当にあのタイミングでジョーンが来てくれなかったらどうなっていたか。
とりあえず俺達は村をあとにし、俺達の村までの帰り道でケイトから口を開く。
「さっきの事だけどさ、あなた達に話すわ」
「別に話さなくてもいいんじゃないか?俺達は誰にも話さないし、君達にも事情があるんだろうから」
「そう言ってもらえるのはありがたいわ、でもねやっぱり中途半端に知られて不安になるよりはしっかりと話して私が納得したいの」
「ケイト!それは……」
俺は別に詮索する気はなかったが、どうもケイトは中途半端に知られてしまった事がかえって不安のようだから俺達に話す事で納得したいんだろうけど、それに対してイザベルが言及しようとする。
「イザベル、思わずお嬢様って口走った事に責任を感じていたんでしょうけど、それは今まで私のわがままにあなたを付き合わせただけだから責任を感じる必要はないわ」
「でもそれは素性を隠す為にも……」
「なあ、お嬢様とか、それを呼び捨てにする従者とか、素性とかってなんだよ!師匠、向こうも向こうで情報を中途半端に出すからちゃんと聞いてこっちもスッキリしようぜ!」
「あ、ああ……短気だなジョーンは。分かったどっちにしても俺達は君達の事を話すつもりはないし、話す事で気が済むなら話してくれ」
ジョーンが突然イライラしたのもあるが、何より彼女達が話す事でスッキリしたいと言うので俺は彼女達の話を聞く事にした。
「そうね、まずだけどケイトというのは本名じゃなくて親しい人だけが呼ぶ愛称で、本当の名前はキャスリン・ヴァイツよ」
「ヴァイツ⁉そんな、まさか……」
「師匠知っているんですか?」
ヴァイツ、ひょっとしてあのヴァイツなのか⁉