演奏スキル
今回の討伐依頼の対象である魔物は、夜しか活動していないので、進行ルートを予測し、俺達、ケイト達とそれぞれ別々の進行ルートで待ち伏せし迎撃する事とした。
俺達のルートに魔物が現れた場合、シーナがケイト達に助けを求めに走るという作戦は成り立ちそうだが、ケイト達を助けに行く手段をどうするかと考えているとケイトが笑顔で俺達に近づいてきた。
「ふふふ、私達が助けを求める方法だってちゃんと考えてあるわ、イザベラ!」
「はい、私の演奏スキルである、音の伝達を使えばあなた方に助けを求められます」
「それはどんなスキルなんだ?」
「特定の人物にのみ私の演奏を届けるスキルなんです、本来は練習用として私自身で確認したりやケイトに聞いてもらう為のスキルですが、合図としても役立ちそうですね」
演奏スキルに遠隔スキルか、このイザベラはケイトを支える為なのかいろんなことができるな。
「ですが、定められる対象は1人のみなので、シーナさんお願いできますか?」
「あ、はい私でよろしければ」
「では合図用の演奏をしますのでこの音を覚えておいてください」
「はい」
その場でイザベラがシーナに覚えてもらう為に合図用の演奏を行う。戦闘中であることを想定して比較的短めの曲だが覚えられるのかこれ?
「ありがとうございます、この音が聞こえれば師匠やジョーンさんにお伝えすればいいんですね?」
「え?シーナ、今の曲覚えられたのか?俺にはさっきの曲を少し短くした感じにしか聞こえなかったけど」
「師匠、私はエルフなんですよ、だから音の聞き分けも得意なんです」
「そうか、それでイザベルはシーナを指名したんだな」
イザベルがいきなりシーナに覚えて欲しいと言ったから、何かと思っていたが、エルフの特性を理解したうえでの事だったんだな。
「はい、シーナさんならば細かい音の違いも分かるかと思いまして」
「さすがねイザベル、ねえねえシーナちゃん、やっぱりその可愛さや耳の良さを活かして、私達と一緒に踊り子か演奏者をやらない?」
「え、ええっとまだ剣の修行をしている身ですから……」
「えええ!そうなのーーー!んーーーー、リッキー、シーナちゃんが強くなったら早く道場を卒業させなさいよ」
「悪い、それを決めるのはシーナで俺の道場には卒業という概念はないんだ」
俺が自分の道場に卒業の概念はないと話すと驚いてケイトが返答をする。
「ええ、どうしてそんな風にしたの?」
「シーナもジョーンも自分の目的があって俺から剣を学んでいる、だからそれが達成できそうになるまでは剣を教えていきたいんだ、俺の剣術が役に立つなら」
「剣術が役に……」
軽くだがケイトにも話してしまった、まあいい、今は魔物退治だ!