模擬戦を終えて
ジョーンの身体を張った作戦により、イザベルのチャクラムと遠隔スキルを無効化し一気にイザベルに槍を突き付ける。まあ槍といっても模擬戦用の木製だけどな。
「動くなよ、少しでも動けばこの槍でぶっ叩くぞ」
「う、うううう」
おいおい、顔が悪人だぞ、ジョーン、だがこれでイザベルはジョーンに対抗する手段はない、後は俺がケイトを無力化すれば勝てるな。
「師匠!この女のチャクラムはひとまず俺が回収している、加勢するぜ」
「いや、そのままその場で釘づけにしてくれ、遠隔スキルの効果がどのようなものかまだ不明な点が多いしな」
「分かった、負けんじゃねえぞ」
ジョーンにそのままイザベルを釘付けする事を任せて俺はケイトに挑む事にした。
「ケイト、君達は確かに魔物退治するには十分な実力を持っている事は分かった、だけどこの模擬戦は俺達が勝たせてもらうぞ」
「イザベルを抑えたからっていい気にならないで、私があなたに勝てば2人がかりならあの男なら倒せるわ」
「そうか、ならばいくぞ」
そう言って、俺は構えを変えた。さっきより防御寄りの構えだ。
「あ、あれは私との稽古の時と、ん?似てるけどちょっと違う」
俺の構えにシーナは少しだけ見覚えがあるが、俺の構えを見たケイトはその構えの型を指摘する。
「確か、その構えって防御寄りの構えよね、カウンター狙いが見え見えよ」
「それなら、こっちからいくぞ」
「甘いわ、そんな構えじゃあ絶対捉えられないわよ」
分かっている、俺の狙いはカウンターでも、直接木剣をぶつける事でもない。
「あのオーラは、ソードザブレイキング!ダメです師匠!いくら木剣でもそれをくらわせたらあの人死んでしまいます!」
もちろんだ、だから俺は直接当てずに衝撃波を放つだけだ、これなら直接殺傷はしないし、ケガもない、ただ彼女をひるませればそれで十分だ。
「くうっ!」
ケイトが怯み、その場から動く事はできない、更に俺は彼女の喉元に木剣を突き付ける。
「さすがにこれではかわす為の動きはできないはずだ、どうするまだ続けるか?」
「う、ううう……私達の負けよ……」
「や、やりましたーーー!師匠!ジョーンさん!」
ケイトが負けを認めた事で、俺とジョーンも武器を下げて、立会いをしていた村長が俺達に駆け寄って来た。
「どうやら、ザックが依頼したあんたらが勝ったようじゃし、魔物討伐はあんたらに任せる事にした方が良さそうじゃな、ケイトさん、すまんが退いてくれるかの」
「はい……この人達の方が能力も戦術眼も私達より上なのでお任せした方がいいと思います、すいませんご期待に添えず」
「いやいや、みんなあんたらに感謝しているよ、踊りと音楽でわしらを元気づけてくれたからな」
「あの、村長さん、ケイト達もちょっと俺から提案があるんだけど」
俺達が模擬戦に勝った、だからこそできる提案がある。