報酬の交渉
シーナの同席も決まり、領主様の遣いでユウという男との報酬の交渉を俺達は村長の家を借りて行っていた。
自分の家の事もあり、村長もこの交渉そのものには加わらないが成り行きを見守っている。
この空気の中、まずはユウさんが口を開いた。
「それではリッキー殿、そしてシーナ殿、我らとしては貴殿らがドラゴンを退治したという事でこれほどの報酬を考えているがいかがだろうか?」
「一、十、……え?本当に良いんですか?こんなに」
「無論だ、貴殿らはこの村、いやひょっとしたらドラゴンを放置していたら周辺を巻き込んでいたかもしれない、これくらいは当然だ」
「あのーーー、ちょっとよろしいでしょうか?」
俺が報酬の額に驚いているとシーナがユウさんに対して口を開いた。いよいよ道場の事を口にするのか?
「あのーー、報酬はありがたいのですが、そのどうしても受け取りはお金である必要があるのでしょうか?」
「ん?もしかして欲しいものがあるのか?可能であれば用意はするが」
「この村に、その剣術道場を作って欲しいのです、師範はこちらのリッキー様で」
「け、剣術道場?師範はリッキー殿⁉」
そりゃあいきなり報酬は剣術道場なんて言われたら驚くよな、とりあえず俺もここで口をはさんでおかないとな。
「ええ、彼女は俺に剣術を教えてもらいたく、この村に彼女の住む家も兼ねてそうしたいという希望なのですがいかがでしょうか?」
「剣術道場か、……貴殿らの希望は分かったが、村長としてはどう考えている?」
「わ、わしですか?うーん、村としては名所の1つでもあれば人が来るかもしれませんし、道場の噂を聞いて弟子入りしてくれれば住人も増えるし」
「……リッキー殿、シーナ殿、こちらとしては報酬を渡したうえで作ってくれとしか言えないが、もし村に新たに作る場合は届け出を願う」
「え?それじゃあいいんですか?」
「ああ、まずは報酬を受け取ってくれ、それでどのような道場を作るか考えたら届け出を出してもらう。そうすれば助言くらいはできるからな」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「とりあえず一度貴殿の希望は領主様に伝えておく、何かあればまたお伝えしよう、それでは」
そう言って、ユウさんは護衛の兵と共に村をあとにした。さあ、どうなるのかな?
「師匠、報酬が入ったらすぐに届け出を出しましょうね」
「まあ、慌てるなよ、とりあえず……シーナ、簡単な修行で良かったら明日やってみるか?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
ずっと待たせるのもなんだし、できる事はやっておくか。




