H、やめとく
「荷物になるからやめとけ」
「はぁい」
しぶしぶ、ターちゃんがタッピーの胸元の扉を閉めた。
だがそれが間違いだったのはすぐに判明した。
ずてーん!
四人を追い越していった自転車が派手に転んだ。
・・・凍った路面を夏と変わらないタイヤで進めばどうなるかなんてのは、少し考えればわかりそうだが、そうしない人は一定数いる。
そして絵に描いたように転ぶのだ。
今回は巻き込まれた人もいず、本人に怪我もないようなのでよしとしよう。
「ねぇ。ハッチ」
「だな」
自転車の人の犠牲により、この先転倒注意なのはわかった。
ならどうするか?
よけるのみである。
「おっと」
でも油断はできない。
道の反対側に渡る交差点にもトラップは仕掛けられている。
車のスタットレスタイヤに磨かれたツルツル路面という罠が。
「すっ、すべ、すべすべ!」
ガシッ! 前のめりになったターちゃんがハッチの腰をつかんだ!
フォーメーション1ワン! 不恰好なケンタウロスっぽいがこれで足は四本! 二本よりかは転びづらくなった!
「・・・」
ガシッ! 転びそうになったサンがターちゃんがターちゃんの腰をつかんだ!
もう何の動物かわからない! ムカデにしては足が足りないから昆虫か?
それでも足は六本! 四本よりかさらに転びづらくなった!
「きゃっ!」
ガシッ! 足を滑らせたサンがとなりのハッチに足払い!
「うわっ!」
さすがに両足を払われてはハッチも立ってられない! そしてここで連結があだに!
転ぶころぶ! ターちゃんも! サンも!
あーっと! 全員転倒だーっ!
・・・幸いにして立ち上がるまで車は待ってくれた。
ずり、ずりっ、と。
足を滑らせながら四人は反対側の歩道にたどり着いた。
「にーちゃん・・・。背中冷たい」
全身雪まみれになって。
冒険は終わった。
このままでは風邪を引くので。
四人は冬になるたび気をつける。
あの日のように転ばないように・・・。
そして。
どんなに気をつけても。
転ぶ時は転ぶのが北国の冬である・・・。
ばっど、えんど。
旅立ちに戻る。
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