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E、このままついてく。

「ねぇ、大丈夫なの?」

「仕方ないだろ」

 ふわりふわりと舞い降りてくるぼたん雪のなか、コウが不安げにハッチへと話しかけた。

 聞いてくる感じは出しているが、そのホンネはもう嫌だ、だろう。

 遅れがちになってきた妹と、ターちゃんを見れば、このままではいけないのはハッチにもわかる。


「ほらみろ! 俺の言った通りだろう!」

「ろう!」

 何も言われたおぼえはないのだけれど、とある大型駐車場の前でタイチョーが胸を張った。

 今になってやっとジグザクに進む近道がチカミチではないことに気づいたように。

 雪のせいで端が見えないほどの駐車場には出勤に使ったのか、はたまたこの雪の中歩くのを嫌ったのか、車はまばらで、ついでに言うならヒーティングが敷かれており黒いアスファルトがいかにも歩きやすそうにのぞいていた。


 ・・・まるで罠のように。


「・・・だよなー」

「・・・」×五。


 最短距離、駐車場を斜めに歩いた先には道は続いていなかった。

 ハッチの身長より少し低いコンクリート製の壁の向こうには、家。このマンションとは違う敷地と示すように、別のブロック塀がぴったりとくっついている。


「ほっ、ほら! どこかに裏口があるかも! なっ、なっ?」

「なっ!」

 視界をさえぎる雪はタイチョー達の味方だった。

 晴れの日なら見るだけでわかる結果は、いまは、実際に見て回らないと結果がわからない。


「じゃ俺たちは逆に行きますね」

 算数で言うところの同じ早さで動く点、AとBである。

 何も起こらなければ、四つ角が九十度の四角形の縦と横をそれぞれなぞった点は、対称の角で出会うだろう。


 出会いました。


 そして、起こりました。


「もう、歩けない! もう、嫌だ!」

「・・・」

 ホントかな~と思えるほど元気いっぱいにターちゃんが主張し始めた。

 サンは対照的=正反対に無言でうずくまるだけだけれど、結果としてターちゃんよりも歩けなさげである。


─── どうすんだよ?

─── どうするのよ?


 ハッチとコウの視線がタイチョーにチクチク、ブサリ! と突き刺さる!


「あっ。俺用事思い出したわ!」

「わ! ええっ? 用事って?」

 初耳だ、と驚く弟を置いてタイチョーが元来た道を戻り始め、あわててトリマキがそのあとを追いかけていった。


「・・・」

 ナニアレ、と見送るハッチとコウの間を、心が折れたターちゃんの叫びがむなしく通り過ぎていく。



 こうして四人の冒険は終わった。

 唯一よかったのは引きずっていた秘密兵器が役にたったことだろう。

 宝は手にはいらなかった。


 このあとハッチはそれ(・・)を見かけるたびに、とある冬の日の苦い思い出が頭をよぎるようになった。


 ばっど、えんど。


 旅立ちに戻る。

 星を塗って(任意)読むのを終える。

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