C、仕方ない、ついていく。
「こう行くより、斜めに進んだほうが早いんだぜ」
「だぜ」
得意そうに鼻の下を指でこするタイチョーをトリマキが真似している。
「・・・」×四。
そりゃあ、四角形の二辺、縦と横をなぞるより、対角線=斜めに進むと距離は短いが。
ハッチとコウは当たり前に。そこまで算数の授業が進んでいないターちゃんとサンまで疑わしい顔なのは、基本四角く区画整理されたところに四角い家が立っている場所を見かけ上斜めに進んでいっても、細かくなるだけで縦と横の長さと変わらないのがなんとなくわかるせいだろう。
「さっすがアニキー!」
「そうだろ? そうだろー!」
・・・わかっていないのもいるが。
それでも距離は変わらない、と。
ついて行ったのは間違いだった。
「にーちゃん、歩きづらいよ~」
「・・・」
文句を言うターちゃんや、無言でどんどん息が荒くなるサンにとって、主要道路からそれた脇道は過酷だった。
雪国あるあるであるが。
主要道路はいいのだ。昔と違い歩道用の除雪車が歩きやすく───やり過ぎてツルッツルにまで───してくれるから。
なら脇道は?
昔ながらの住人の手作業である。
その範囲は持ち家の前まで。
ロードヒーティングかっ? と思えるほど雪かきする家もあれば、誰かがやるだろ、と放置している集合住宅もある。
つまりは少しの距離で高低差があり、でこぼこの道は体が小さい弟、妹には厳しい。
ちなみにトリマキはハッチやサンとクラスは違うが同学年である。
「がんばれー。まだまだ行けるぞー」
「ぞー」
タイチョーとトリマキの言う通り、ターちゃんやサンはまだ歩けるだろう。
しかし、その “まだまだ” 目的地まで届くか。
届いたとして、帰り道は?
そこまで考えられるかどうかが。
“隊長” と “タイチョー” の差、である。
雪もだんだん降る量が増えてきた。
さて、どうする?
E、このままついていく。
F、生殺与奪の権を取り戻す。