Q、あれに見えるは
「おっ。見えてきたぞ! あそこでいいんだよな?」
途中、タッピーやら、かまくらやら、コンビニやらで一通り騒動を起こしても前に進みさえすれば、やがて目的地にたどり着く。
たとえそれが力まかせでも、だ。
「・・・そうです」
すきあらば横路にそれそうなタイチョーをいちいちたしなめてきたハッチは、疲労困憊=むっちゃ疲れている。
それでも大型スーパーの灯りと、増えてきた人が彼の表情を明るくしていた。
─── ここまでくれば。
あとは店に入りお宝を手に入れるだけである。
もう、問題は起こらないだろう。
「あそこでもらえるんだよなっ! パ・・・」
「わー、わー!、わー !!」×二。
なんてのはまぼろしだった。
お宝直前でネタばらしするタイチョーの言葉を、ハッチとコウが力を振り絞ってさえぎった。
「こんなところでネタバラシとか! やめてくださいよ、本当に!」
「おっ。おおぅ」
─── なんかこう。味は変わらないのに、とか思っていそうだ。
もったいぶるのもどうかというささやかなお宝ではあるが、発表するタイミングはある。
できれば年少組にはサプライズで驚いて欲しいのがお兄ちゃんお姉ちゃんのささやかな願いである。
そして、その瞬間はおとずれた。
「・・・?」
「ほら、これをこう押して、こう・・・」
年少組にはちょっと難しい操作だったか。
「む、りょう?」
ターちゃんのスマホを持つ手が、信じられない、というかのように震える。
「・・・一個プレゼント?」
サンが上目遣いで姉に確認する。
「お菓子がただでもらえるなんて・・・」
「・・・あっていい、の?」
兄姉の顔と、スマホの画面を何度も往復する視線。
税抜き158円、税込170円が四つ。
締めて680のお菓子が無料でもらえるなんてのは小学生にとってはお宝に他ならないだろう。
「ああ、開店記念のクーポン使用で無料なんだ」
苦労は報われた。
パッと咲いた年少組の笑顔によって。
そして・・・。
となりでは悲劇が巻き起こっていた。
「天は我を見放したかーっ!」
タイチョーがお店の床に膝をついて慟哭=すごく悲しんでいた。
「にーさん・・・」
トリマキの手にはスマホ。
あっ、察し。
タイチョーがゲームアプリの課金しすぎで、時々親にスマホを取り上げられているのは有名な話だった。
今回もそんなタイミングだったのだろう。
トリマキも「お店の開店記念品を配ってる」ぐらいしか話さなかったのかもしれない。
冒険は終わった。
お宝は手に入れたが、思い出は上書きされてしまった。
四人は思い出す。パ○の実を見るたび、食べるたびに。
ちょっとした冒険、ではなく。
涙でぐちょぐちょの年長者の顔を・・・。
なんか、こう。
ばっど、エンド?
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