O、せっかくここまで来たんだし、店内をまわる。
お店で売っている商品を持ちながらのウィンドウショッピングは、ちょっと気恥ずかしい。
ちゃんと清算済みな証しにお店のロゴが印刷されたテープが貼られていても、ドキドキしてしまう。
まあ、ハッチとコウと違い、年少組はあまり気にしないのだが。
「むむっ! これは・・・鳥!」
「・・・大きい」
「ケーキにライダーがのってる!」
「・・・帽子、かわいい」
「生首、だと?」
「まぐろ、魚の、な」
折しも、年末の店内には、鳥の丸焼きやクリスマスケーキなど、普段と違うものが多く、開店記念でしか見られない解体ショーの産物も飾られていて見飽きない。
はぁ。
そう、帰りの苦労を考えなければ、にぎやかで楽しい店内である。
「あらっ?」
そんなハッチの後ろから聞き覚えのある声が発せられた。
「まあまあ」
次に聞こえた声にも覚えがある。
「ハッチ、何であなたこんなところに?」
「コウも」
マザーズ、登場。
「ああ、そういえばお菓子配ってたわねー」
「それでここまで ?! 歩いて?」
「もう~」
その通りなのだが、冷静に言われると恥ずかしいのかコウが母親にそれ以上言わないで、と抗議の声をあげた。
「あ、母ちゃんだ!」
「・・・ママ?」
いつの間にか、兄や姉がついてきてないので引き返してきたターちゃんとサンが首をかしげた。
「あら! あなたたちまで!」
「お菓子ってすごいのね・・・」
ちなみに開店記念品第一弾はカップ○ードルである。デフォルトの。
シーフードならハッチが。
カレーならコウが。
えっちらおっちら歩いたことだろう。
「あー。楽」
「文明の力様々だな」
「何言ってるの」
帰りは母の運転するワゴン車で。橇も忘れず。
「全部開けちゃうわよ? いい?」
仲のいいハッチとコウの母親は、帰宅後そのままお茶を飲みながら話すようだ。
冒険は終わった。
四箱プラス、母二人分で六箱、からの~、親の茶菓子分マイナス。
大皿に盛られたそれはさながら山のようだった。
「パイ○実の八甲田山や~」
「なんだよそれ」
ターちゃんに突っ込んだハッチだけれど、少し崩れてなだらかになった小さなお菓子はまさにそう見える。
「あ、待って! 食べる前に写真、写真! お母さん~!」
「・・・」
姉の提案に妹がそっとつまんでいたのを戻した。
「はい、チーズ!」
カシャッ!
雪解けして茶色いお菓子の山の前で、八つのピースが花開いた。
四人と二人は思い出す。
とある冬の日の小さな冒険を。
それは、小さな宝箱に収まったお菓子と共に・・・。
そして、額縁に収まった写真と共に・・・。
とぅるー、ハッピーエンド。
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