K、ここは我慢。
じーっ。
ハッチにしか見えない仮想の照準がターちゃんをとらえた。
顔色、よし。
もじもじ、なし。
過去検索、出発前に飲み物の飲み過ぎ、なし。
結果:フェイク=偽物!
「ねーねー。おしっこ!」
「我慢しなさい」
「えー!」
ハッチは知っている。
本当に切羽詰まった=ギリギリのヒトは「おしっこ」等と言わないことを。
授業中の教室ではないのだ。
行きたいならさっさとすませるだろう。
いつの間にかいない姉妹のように。
「お待たせ」
「・・・」
「あーっ!」
やられた! とやっと気づいたのだろう。
キョロキョロと姉妹と兄の顔を見るターちゃんの計画は失敗し、四人は先へと進む。
「疲れた」
「遠いって言っておいただろ」
「・・・疲れたぁ!」
本当に疲れた人はそんな大声を上げないんだけどなー、と思いながらもハッチは秘密兵器を使った。
ててんててってて~♪
秘密兵器=プラスチック製の橇、である。
大量生産されるこれが実用品として使われるのも雪国あるあるだろう。
抱っこに腕が疲れた親や、みかんを箱買するときなど、薄いプラスチック製品はやたらと役に立つのだ。
春にアスファルトでこすれて穴が空くぐらいに。
「あー」
「・・・」
橇を置くや否やサンが前をキープする。
「うー」
まあ、一メートルほどの橇は子供なら二人乗りは余裕である。
「おい」
「・・・」
「おーい!」
・・・さすがに三人乗りは厳しいが。
「重いんだよ」
「・・・ここでそう言っちゃうから、ダメなのよね~」
ハッチにダメ出ししたサンが橇の後ろから立ち上がりついていく。
「ねぇ、これって」
「言うなよ縁起わるい」
行動不能なのは一緒だろう。
別にザオなんとかいう呪文や教会に行く必要は無いが。
「・・・そろそろ、代わってくんない?」
「ここでそう言っちゃうからダメなのよね~。ほら、がんば!」
「えー」
などという繰り返しをしながら歩き、ようやく目的地に到着した!
M、そこはまるで
に、進む。