第65話:空気最悪な説明会
「……あのときのヤバ女」
「酷いなぁーレイマの親友君、私は完全に無敵の美少女お姉さんだよ? 一切やばくは無いと思うけどなぁ――それより、あれをレイマに語らせるのは嫌だから私が話すけどいいかな?」
「……それはいいが……我が友は無事なのか、急に顔色が……」
「やっぱり良い子だね、カイザー君……君みたいな子がいっぱいだったらこうなっては無かったと思うよ」
どこか遠くで喋っているような感覚で彼等の会話を聞きながら、メルリが速攻で作っただろう……無駄にふかふかなそれの上で休む。
「じゃあ、まぁすっごく簡単に言うけど、レイマ人間の国で処刑されたんだよねー」
メルリらしいと言えばらしいのだが、喋った瞬間に全てを彼女はぶっ飛ばした。
直球過ぎるとは思ったが、無駄に長引く説明をされても困るし……何より、こっちの負担を考えるとそう言ってくれた方が助かったけど、確実に空気が死んだのが分かった。
「……は?」
「――処刑?」
「霊真殿が?」
一言だけ漏らして黙る親友に、絶句する綾音。
……カイザーは今の言葉が理解できなかったのか一度繰り返し、椿さんに至っては完全に信じてない様子だ。
「そそ、場面自体は召喚獣の皆を抑えるので見てなかったけど、この世界に来てるってことはちゃんと死んだと思うなー」
「おい畜生、もうちょっと配慮できないのか?」
「いやねぇバアル君、だって他の言い方ないだろう? どう取り繕ってもあのカスでゴミな奴らは私らの愛しのレイマを殺したんだから」
「……その言い方では、こちらの世界の主の友が傷付くだろう!」
「えーじゃあ代わりにバアル君が説明してよ」
一触即発、完全に睨み合う二人を今の状態で止めるのは無理だが……この場で喧嘩になるのは困るし、誰か止めてくれないかと思っていると、アルゴルの方から殺気を感じた。
「おいショタコン、説明は良いが……もうちょっと言葉を選べ。それにバアルはそいつ相手に真面目にやっても意味ないから噛みつくな、今はレイマのこと考えろ」
そう言って怒ってくれるアルゴル。
こいつはこいつで本当に変わらないと思いつつ、皆の顔色を窺えば……案の定というか、表情が暗かった。
「……面目ない」
「はいはい、ごめんねアルゴル……まあそれなら手短に話すけど、魔王を倒した後でねレイマは仲間四人と別れて自分を召喚した国に帰ったんだ――それで、あれだよちょっといざこざがあってさ、反逆者に仕立てられて処刑されたって流れだね」
「それは――本当なのか?」
「そだよー? 嘘つく意味ないし、私はそれを見届けたからね」
怒り……いやそれすらを通り越して、知っているラウラだからこそのその問いにメルリはそう答えた。
「なぁおい――霊真は、親友は抵抗しなかったのか?」
そして怒りからか魔力が漏れてる式がそう聞いたのだが……その視線はメルリでは無く俺を向いていて、抵抗してほしかった風な言い方となっている。
――だけど、式も分かっているのだろう。
俺がこの世界に居る時点で、その答えは決して良いものではないのだから。
「逆に聞くぜ親友君……私達みたいな怪物を従えるレイマが抵抗すると思うのかい? 確かに抵抗は出来たよ? それどころか王国を敵に回し生還する事さえも出来た――でもね」
「……それ以上はいい、分かったから」
「うんうん、彼をよく分かってて感心だ――で、それで気づけばレイマはこっちの世界にいた感じだよ――はい、これで終わりなんだけど質問は? ……ってどしたの皆? 黙ってるけど」
「相変わらずだけど、お前は特に人の心ないよなメルリ」
「いや、私一応人間は大好きだよ? レイマ以外は割とどうでも良いけど、今でも安心安全の善人だと思ってるんだけどなー」
「種族として好きってだけの奴がよく言うよ……」
「はは、痛いとこつくねー」
普段通りというか、相変わらずの召喚獣のやり取りをメルリが作ったふかふかな椅子の上で見守りながらも皆がどういう反応をするかを見届ける。
「なぁ我が友――お前は、その異世界を恨んでないのか?」
「あー……そうだな、納得はしてるから」
「そうか、なら我から言う事はない」
「うん……やっぱり優しいなカイザー」
カイザーの問いに答えるも結局終わっている空気……完全にお通夜見たな雰囲気のまま、冷め切った会場で――アルゴルが口を開く。
「まあなんだお前等、これは終わった話だから気にすんな――あれだ残った料理はオレがレイマの中の奴らに渡しとくからさ、いったん落ちつこうぜ?」
そう言ってこの場所は一度解散……皆が今日泊まる予定だったコテージへと戻り、最悪な空気で一夜を過ごすことになったのだが……あまり俺は眠れず、無駄な時間をベッドの上で過ごすことになった。
「…………言わない方がよかったかもな」
いつかは話す必要があると思っていたが……今思えば優しいあいつらには酷な話だし、もうちょっと俺が耐えてメルリに説明させなければよかったなと……そんなことを考えながらも、次第に意識が落ち――。
「お休みレイマ、ちょっと私たちは用事を済ませてくるね」
「……ちょっと頑張るから応援しててますた」
意識が落ちる直前……メルリとルナの姿が見えたが、抗えぬ眠気に俺はそのまま寝てしまった。




