第48話:召喚獣との休日ぱーとつー
「癒やしが欲しい……」
……あの実験というかゴーレム作成の被検体になったせいで強制的に学校を休むことになり、完全に疲れきった俺は……解放され、やっと帰ってきた自室でそんな言葉を漏らした。
「…………白衣、怖い」
隅々まで体を調べられて……弄くり回されて、なんかもう色々精神的に参った俺は亡霊のようにそう呟き――脳死で召喚獣を呼び出した。
「……あれレイマ~ボクに何の用?」
「ソルかぁ……」
「かぁってなに? 不服なの?」
「いや、お前って癒やしだなって」
「きゅ急に何? 霊真がデレる事なんてあるの? え、壊れたレイマ? もしかしてボクの事をからかってるの~?」
俺の言葉が予想できてなかったのか、完全に取り乱しながらも……いつもの調子を保とうとするソル。だけど、脳が完全に死んでいた俺はそんな事に気づけるわけも無く、ただ単純に思ったことだけを言う機械となった。
「思えばあんまり暴れないし……たまに罵倒してくるけど、そこまで酷いこと言わないし、アジとかアポとかと比べて何も壊さないし、クリードの馬鹿と違って良識はあるし……お前、癒やしだなって」
「…………ふぇ? え、そんな事ボクに思ってたの?」
「よく考えたらそうだなって、最初から結局守ってくれてるし……本当にいつもありがとな」
「あの腐れ科学者、レイマに何したんだよ……今度会ったら処すか」
なんか言ってる気がするが……今の俺にそれを気にする余裕はない。
……そもそも、俺はもっと召喚獣達に感謝を伝えるべきなのだ。だから、もうこの際ソルに対して思ってること言ってやろう。え、後のこと? 何も分からない。
「なぁソル、お前には本当に感謝してるんだぞ俺。異世界に来て何も分からなかった俺を助けてくれて、前に進ませてくれて……こんな状態で言うのは変だが、不甲斐ない俺によく付き合ってくれたな」
「…………なんかいいや、あの科学者グッジョブ。録音魔法で残しとこ~」
「……だから、ほんとに――ありが、とう」
「あれ、レイマ? ちょっと、眠気限界なの分かるけど、寝ないで? せめてボクを戻さないと我慢できなくな――あ、寝ちゃった」
――――――
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――
あの馬鹿学者のせいで完全に疲れて眠るボクらの主の姿を見る。ここまで疲れてるのを見るのは久しぶりだし、何よりこの世界に来てから初めて生で見る彼の寝顔に生殺し状態が続く。
「…………ちっあの女、二日も独占しやがって」
彼の体を観察し、実験と称して無理難題を押しつけまくり彼の体を調べまくったこの世界でも相当な上位者である江奈とか言う女。
そのおかげでこうやって感謝されたのは良いものの、彼を疲れさせてここまで追い詰めた強敵に対して、怒りだけが湧いてくる。
というか彼が止めてなかったら何人かが、出そうになってたし……。
「…………まぁでも、褒められるとは思わなかったな。久しぶりに聞いたよ、レイマの本心」
異世界で全てを、ボク達を救い続けた英雄である彼は……戦いが進むにつれて擦れていった。ボク達にすら心中を話すことはなく、裏切られて最後の瞬間まで抵抗しなかったこのお人好しは……ほんと思うが、どこまで人のために動いたら気が済むのだろうか?
「まあだからボクは気を許してるわけだけどね……」
ルナから聞いたが……本当に何処でもこの人は変わらない。
誰かを助けるために、何もかもを守るために……目に見えるものを救うように動き続ける大馬鹿者。どこまでも優しい彼だから、悪と称されたボク達を救おうと動きそれを成し遂げた愚か者。
「もっとボクらを頼ってくれても良いのにね」
それは純粋たるボクの願い。
……ずっと救ってきた彼だから報われていい筈なんだ。
ずっと、ずっと……誰かのために動いた彼だから幸せになっていい筈なんだ。
「だからこそ、ボクはボクらはミソロジアの全てを許さない」
彼の善意を利用して、彼の仲間を盾に取り……どこまでも貶めた塵達。
それを殺せなかったことがどこまでも心に残っているが、あの国だけは多分あの獣人の男の子が滅ぼすだろうと予想は出来てる。
それほどまでに彼は霊真を慕っていたから。
「ボクは世界を蔑み嘲笑う……今頃どうなってるかなぁ、ほんと」
眠る彼を撫でながらも、ボクはケラケラ笑い出す。
……彼を殺した報復を、あの世界の全てが、その罪の重さを自覚し滅んでくれれば良いのになと思いながら。
「種は沢山あるからね、どうなってるか楽しみだ」
……一番の望みはレイマの幸せ。
だから、それ以上はいらないけど……それはそれとして、気になるなと。
「あぁボクって本当に終わってるね~……ま、この本性は隠すけど」
愉悦を喰らい嘲笑い、蔑み貶め――咀嚼する。
ボクは魔狼フェンリルの妹、惑わし狂わせ全部を壊そうね。
「ふふレイマ――だーいすきだよ?」
貴方はボクらの王だから、その意志には従おう。
……あぁ、もっと一緒に堕ちてこう? 世界が終わるその時まで、ボクらに堕落させてあげるから。




