第162話:大怪獣のドッカンバトル
それが放たれた瞬間、全てが白に染まる。
ほぼ開幕に放たれる全てを終わらせるその攻撃、それは――。
「ッ――ナイスだ!」
対の存在である彼女が、その攻撃を喰らって俺達を守ったのだ。
俺等を守るように立ちはだかるベヒーモス。灰色の体躯をしたその獣、あまりに巨大な彼女は、始めてて対峙した時より数倍大きく百メートルには達しない者の、それに迫る大きさを誇っている。
「【太陽】【生命】! 全力のバフだ、いくぞお前等ァ!」
「【氷界】――全力で戦うよ、やろうね」
「【デュアルサモン】ルミア・アスモデウス、ベルフェ・フェニックス」
式が自身が使える最高のバフを使い、綾音が氷の世界を展開する。
合わせるように俺は二つの召喚陣から悪魔である二人を喚びだして、俺はフェニックスに乗る。
現れるのは色欲を冠する悪魔と、怠惰を司る不死鳥。槍を構える彼女と獣の姿で現れた二人は、最上級の相手を前にして、丁寧に――そして、全力の魔力を解放した。
「【刀刃修羅宿し】さぁ、出陣でござるよ!」
「【サモン】だ! ――征くぞ、冒険をしようかヴァルキュリア!」
「原典解放【純真の吸血姫】」
「あっついな、お前等――なら老骨も本気出すか原典解放――【蛇龍殺しの英雄神】そして俺の全部のせだ【人修羅具現禍津神】」
椿さんが自身の身に何かを降ろして、カイザーは己の相棒を喚び出す。
原典を持っているラウラは吸血鬼たる原典を解放し、大和さんはそれに加えて己に禍津神を宿して嗤う。
海が広がり、世界が沈む――終末獣へと姿を変え己を曝け出したリヴァイアサンは、ゆっくりと海の中から姿を現した。
「――やるぞ、皆!」
それは、あまりにも――いや、そんな言葉すら生温い程に巨大な蛇。
目測なんか測れない、全貌を見ることすら敵わない。
それは原初の獣、それは最強の蛇、それは世界を押し流す蛇龍――そしてそれは、神が作った終末装置だ。
召喚に使ったのは現魔力の六割。
維持を考える必要もあり、戦うための魔力までも考えると足りるかなんて分からないが……そんな事を気にしている余裕はない。
「初撃、来るぞ!」
起こりが見えた、その巨体を動かして……そのまま認識できないほどに巨大な壁のような尾が海中から出てきて……そのまま横薙ぎの一撃が放たれる。
防ぐのは、当たり前だが俺等には不可能。
重く、堅く、どこまでも速いそれを受ければ即死は免れず、戦線は崩壊するだろうが――その攻撃はベヒーモスによって防がれそれどころか。
そのまま尻尾を掴んで、海中からリヴァイアサンを引きずり出して。跳躍をして海面に叩きつけたのだ。
無茶苦茶な戦闘、まさしく大怪獣同士の規模がバカみたいな戦い、その中で俺達も各々の役目を果たすためにも動き出す。
「――原典解放【|色欲冠する破壊と美徳の魔王】!さぁ、ご主人ぼくのオンステージだ! 魅了は全開、ぼくに見惚れるといいよ!」
「回復は任せてねー……ほどほどに頑張るから」
魔法という存在を魅了する、規格外なバフは綾音の世界との相乗効果を生み出したのか、氷の世界を強化する。その効果は無尽蔵に氷の武器が作れるというもので。
その効果を見る限り綾音の魔力が続く限り最高燃費で武器を射出し続ける世界となったのだ。
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
氷の武器の掃射に耐えながらベヒーモスを締め付けるリヴァイアサン。
巻き込まれたら一瞬で潰されるような、その戦闘の中……俺は皆の魔力を集めることに専念し、レーヴァテインを喚び出す。
この戦闘であれば、必然的に使われる魔力は多くなるだろう。
アレを使うには俺一人の魔力では足りないのは分かっているから、どこまでも勝つために自分の役割に集中する。
「合わせろ椿ィ!」
「まだそれ苦手でござるんだが!? ――あぁもう、この鬼畜師匠!」
『神去流連技――別月!』
ほぼ同じタイミングで放たれる大和さんと椿さんの連携技。
その攻撃は皮ごと肉を断ち、そのままリヴァイアサンに届くが……一瞬で再生してしまい、周りに血を残すだけで終わる――だが。
彼女の血は一滴だけでも、極大の魔力を含んでいて……魔法のための魔力が一気にたまる。だからか彼女を出血させそれで魔力を溜めるという作戦が頭を過って。
一瞬だけ躊躇いの気持ちが出てきたが……そんなものをすぐに殴り捨てた。
これは、試練であり殺し合いなのだ。そんなの彼女は望んでなくて俺達との殺し合いを望むのならば。
爆撃、氷剣、刀による連携。
龍と騎兵の突撃――それに加えて。
「貴様の影を利用させて貰うぞ――死を編む影の巨剣」
その背後から巨大な剣が現れて、背後からリヴァイアサンを串刺しにする。
ラウラが使う魔法の中でも凶悪なそれ、影の巨剣は突き刺さると同時に相手の魔力に侵入しその中で増殖し――。
「原典終局――鮮血彩る串刺しの宴」
その体の中から串刺しにして、その命を大幅に削った。
――普通ならば即死、体内を魔力が流れる回路の中からの攻撃はいくら彼女でも。
だが、その考えが甘かった。
極大の魔力の高まり、覆せない死の予感。
……肌が冷え、それどころか尋常じゃない魔力の気配に押し潰されそうになる。ボロボロな筈の彼女は、何かを溜めていて――。
「ッ【アイギ――」
――――――
――――
――
「――皆!?」
「お前等ァ!?:
フェニックスに乗り後衛でサポートしていた俺と式、それ以外の者が飲み込まれる。有り得ないくらいに魔力が籠もった今の光線は、全てを破壊した上に海を干上がらせた。熱気で肺が熱い、場を支配する魔力に酔いさえ感じてしまう。
そんな中で、次に見えた光景は仲間達が地に伏せる光景――ではなくて。
「――ッ!?」
さっきまでいたはずのベヒーモスが消えた――そんな光景だった。
――頭が真っ白になる。無傷な皆を見て、最後に一瞬だけ見えた彼女が、ベヒーモスが庇う光景を信じたくなくて。
その現実に――この世界で初めて仲間を死なせてしまった現状に、理解が追いつかなくて。叫びそうになった――まだ名前を、あげれてないのに、これが終わったら渡そうと思ったのに。
急に言われたけど、本当は……みんなで、召喚獣の皆で前から考えていたんだ。
あの瞬間に渡せば良かったと。考えるなんて後回しにせず実はあるんだって――伝えれば。シエルっていう、そんな名前を渡そうと。晴天に宙に憧れた彼女に、その意味を持つ名前を贈るはずだった。
「ッシエル!」
「ふふ、嬉しいな。黙示録解放――狩谷霊真の終末獣」




