第99話:死の聖女と首狩り蝙蝠@幼女を添えて
この前の魂の世界でのラグナロク事件があってから、召喚獣との関わりを増やせとアンラに言われたので、俺は今日も魂の世界に潜っていた。
とりあえず向かうのはいつもバロールがいる教会。
結構前までは俺の魂の中に教会など無かったんだが……バロールが何もない空間で祈りを捧げてるのが怖いとかいうのが多く届き、メルリが引きながら作ったとかいう事件もあったのは懐かしい。
元々バロールはミソロジアでシスターをしていたし、祈るのは普通だと思うのだが、思えば何の神を信仰してるんだろうな?
「……いるか、バロール?」
教会に足を踏み入れて声をかければ、視界の先には修道服を着た桃色の髪の女性が祈りを捧げている。
次の言葉をかけるのを躊躇うほどに集中しており、邪魔しないように帰ろうかと思ったが……俺の存在に気付いたのか祈りを解いて、振り向かずに声をかけてきた。
「貴方様、今向かいますので帰らないでくださいませ」
「……おう、転ぶなよ」
「ふふ、心配してくれるのですね。ですが大丈夫です、もう慣れていますので」
そして迷いのない足取りで俺の方へと向かってくる彼女は、寸の距離まで近づいてきて確認する為に俺の顔を触ってきた。
そして安心したのか少し距離を開けて、咳払いの後に喋り始める。
「うふふ、ちゃんと貴方様ですね。して今日は何のご用でしょうか?」
「こないだお前を喚んだだろ? だからそのお礼でもって思ってさ、何かしてほしいことあるか?」
「――――ッ!?」
「……あれ、バロール?」
最近一番世話になったバロールにお礼をと思ってそう言ったんだけど、見えない筈の目が見開かれる気配すら感じる程に戦慄された。
「あぁ神よ、卑しい私をお許しください――どうして、何故……こんな試練を与えたのですか?」
「どうした? 気楽にでいいんだぞ、バロールなら無茶なこと頼まないと思うし」
「……普段の私、恨みます」
だけど今度は生気が無くなるほどに死んだ声でそう言われたので、感情の落差に驚いた。大丈夫だろうかとは思ったが、本気で悩んでいるそうなので少し黙り俺は俺で何か出来ないかを考える。
「――――ッうぅ、ならレイマ様、一緒に散歩しませんか?」
「ん? そんなんでいいならいいぞ、でも外は危ないしな。この世界でもいいか?」
「はい、貴方とならばどこまでも」
そういうことになったので、俺は彼女の手を引くようにしながらも教会を出て俺の魂の世界を歩き始めた。
魔力感知で周囲を見れるバロールではあるが、目は隠しているから転ぶかもしれないから。
「……ついでだしシバルとかにも会いに行くか」
「あらカマソッソ様ですか? いいですね、最近喚ばれたのでしょう?」
「まあな、ダンジョンで助けてくれたし礼もまだったし」
「なら審判でもしましょうか? あの方でしたら戦いを求めそうですし」
「そうかもな……久しぶりだし、それもありか」
会話をしながら手を引いて、彼女と共にこの世界を探索する。
バロールと向かっているのはこの世界に立てられた巨大樹だ。普段はヨルムンガンドやラタトスクとかが寝ている場所であり、結構な召喚獣の皆が過ごしている場所。
シバルも結構そこでぶら下がっている時があるしいるだろうとの算段だ。
「あ、そういえやベルクにも礼を伝えないと」
「ベルクちゃんもですか、今日は予定がいっぱいですね」
「せっかくだし、乗せて貰って飛ぶのもありかもな……そっちの方が早いし」
そうなったので俺はベルクがいるだろう巨大樹の前にある森に足を運び、ベルクの名前を呼んでみれば……すぐに木の中から茶色い髪をした少女が現れた。
長い髪を後ろに結っている彼女は俺を見るなり目を輝かせて……とても嬉しそうに破顔した後で抱きついてくる。
「ぱぱ! ベルグに会いに来たの!?」
「そうだな、シバルに会いに巨大樹に行くんだが一緒に行かないかって思ってさ」
「いくー! でも飛ぶのはヤかも……せっかくならお喋りしたいの!」
「ん、了解……じゃあ歩いて行くか」
……ベルグ・フェルニル。
原典としては死体を飲みこむ者または風を打ち消すものという名を持つフレスベルグという巨大な鷲。
初めて会ったときは記憶を失っており、一緒に過ごす内に俺のことを親同然に慕ってくれる子だ。
「そうだぱぱ手繋ご?」
「両手塞がるんだが……」
「大丈夫、ベルグが案内するから!」
「ならいいか」
左にバロール、右にベルグと言う体勢で俺は手を繋ぐことになった。
道中で何人かの召喚獣に会いながらも、俺達は軽く話をしたりして先へと進み辿り着いたのは巨大樹の前。
「シバルーいるかー!」
「いるぞ……レイマ。それに魔眼と鷲か、何の用だ?」
「いや、昨日喚んだからその礼……なんかあるか?」
「……ならば、吾と戦ってくれ。昨日の件で思うことがある」
「あー了解、それなら開けた場所行くか」
バロールの予想通りというかなんというか、戦うことになったので俺は保管庫にある武器を手元に喚び出して構えて、それから一時間ほどシバルの奴と戦うことに。
暫くして何人も集まってきたりと、観客が増えたりしたが……久しぶりの模擬戦は結構充実したもので、改めてシバルの力を実感できた。




