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嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
8/78

TAKE6 待ってるから


 まだ心臓がバクバクと胸の中で大暴れしている。僕は膝に両腕を凭れさせ、自分の心臓の音を聴いている。

 隣で彼がぬるくなったであろう珈琲を飲み干した。カタッと小さな音がソーサーの上で転がった。


「越前さん……」

「享祐」

「あ、えっと、享祐……さん」


 じろりと睨まれたのに気付く。でも、さすがに呼び捨ては無理だよ。


「ま、いいか。追々な。で、なに?」

「あの、いつも共演者とはこういうこと、されるんですか?」

「え? ああ、ははっ。まさか」


 大げさにのけぞり、笑い出した。


「プライドの高い女優陣にそんなことしたら、訴えられるよ」


 それはそうだ。じゃあ、僕には訴えられないと? 訴えないけど。


「えち……享祐さんなら、喜んで受け入れちゃうんじゃないですか? モテモテだし」

「どうかなあ。あ、もしかして怒ってる?」


 突然やって来て、いきなりキスしてきて、怒ってないってどうして思うんだろう。ところで僕は怒っているのか? ……全く怒ってない。もし、女優さんともそういうことしてたとしたら、腹立ったかも、ヤキモチで。


「不思議なくらい怒ってません」

「そっか、良かった。これから長丁場になるけど、よろしくな」


 ぽんっと僕の背中を右手で叩く。僕は体を起こし背中を伸ばした。


「ドラマの……ためですよね?」


 言っても仕方ないことを、僕は問いかける。多彩な才能を持ち、セクシー俳優としても名を成している彼だけど、同性愛のドラマは初めてだ。僕に至っては、女優さんとのキスシーンだって数えるほどしかない。


「台本貰ったら、一緒に練習しよう。俺の部屋に来てもらってもいい。連絡先交換しないとな」


 僕の問いには答えず、享祐さんはスマホを取りだした。僕も慌ててカウンターに置いていたのを取って来た。

 アプリを開いてコードを読み込む。無視されたら、それ以上聞くことが出来なくなってしまった。どうして答えてくれないんだ。『そうに決まってるだろ』、その一言で構わないのに。それを言われて、僕はガッカリするのか安心するのか、わからないけれど。


 享祐さんは、すっと立ち上がるとジャケットを軽くはたいた。脚が長いからデニム姿もクールだ。


「顔合わせは来月かな。早く始まって欲しい」

「はい。僕も」


 僕も立ち上がる。背の高い享祐さんを見上げた。柔らかい視線が僕を捉え、口角が上がっているのが目に入る。胸の奥で、もう一度心臓がきゅんと鳴って跳ねた。


「じゃあ、たまに連絡して。待ってるから」


 僕の頭に手を置いて、くしゃくしゃとかき混ぜた。


「さらっさらだなあ。イケメンの髪はやっぱりサラサラだよな?」


 なんて言ってくるりと踵を返した。実は僕の髪は少し天パーが入ってる。なのでこのサラサラはストパーの為せる技なんだよ。ついでに少し明るい色にしてる。

 享祐さんの髪は日本男児を誇るような黒髪。ショートヘアでふわりとしたナチュラルパーマな感じにまとまっている。


 僕はその後ろ姿を見送った。ドキドキと胸打つ音を耳に感じる、まるで恋する少女のように。




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