表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
68/78

TAKE54 東さんの憂い


「明日、記者会見する」


 東さんが買ってきた珈琲を飲み干すと、享祐は席を立った。名残惜しいけど、ずっといてくれるわけじゃない。


「あ、うん。そうなんだ」


 帰り際、享祐が東さんにも聞こえるように言った。当然と言えば当然だけど、記者会見か……。


「体、辛くなかったら見てくれるかな」

「もちろん見るよ。明日にはもっと良くなってるから大丈夫」


 背筋を伸ばすと、長身の享祐はさらに大きく見える。姿勢がいいから自然に威圧感が増す。それは何かを決心したかのように思えた。


「あの……どのようなことを話されますか? うちの三條についても……」


 東さんがおずおずと尋ねた。享祐の得体の知れない雰囲気に嫌な予感でもしたんだろうか。


「ああ……そうですね。もしご迷惑をおかけしたら申し訳ないです」

「へっ? それはどういう」

「では、失礼します」


 東さんが縋るように放った言葉を無視し、享祐はドアの外へと行ってしまった。扉が閉まる寸前、僕をちらりと見て。


 ――――何を考えてる。享祐……。記者会見で何を言うつもりだ?


「なんだろう、なんか嫌な予感しかしないっ」


 もういるはずもない廊下を見に行ったり、戻って来ても病室をウロウロしたりと東さんが落ち着かない。


「大丈夫だよ。僕は、享祐が何言っても全然平気だよ」


 ――――そうだよ。たとえ、真実を言ったとしても。


「それ、いつのまに名前呼び捨ててんですか」


 僕が『享祐』呼びしたのを咎めて来た。言われてみれば、東さんの前では『越前さん』って呼んでたかも。


「いつの間にって言われても……」

「はああっ……」


 東さんはがっくりと肩を落とし、これ見よがしに大きなため息をついた。


「さっき売店行ったついでに病院の玄関に行ってきたんですよ」

「あ、どうだった? 記者さんたくさんいた?」

「いました。病院側と協力して警備の人頼んでるから、患者さんには迷惑かけてないと思うけど、結構いましたね。それで、ウチの事務所の子に聞いたんですが……」


 東さんの表情はさえない。何かあったんだろうか。


「越前さんがここに来た時、記者団が色めき立ったって」

「そりゃ……そうだよね」

「でも、あの人は全く動じず、むしろ堂々としてたと。記者がマイクを向けると、『記者会見で話しますので、患者さん方に迷惑かけないようお願いします』って言ったそうですよ」


 カッコいい。その姿を想像すると、普通にときめいてしまう。だけど東さんはご不満な様子だ。これはどう対応すればいいんだろう。


「それが何か……悪いの? 共演者が自分のファンに刺されたんだ。見舞いにくるのは当たり前だろ?」


 当たり前とは思わないけど、享祐ならそうしてくれると思ってた。


「伊織さん、いつまでも私を騙せると思わないでください」

「えっ……」


 大分元気になったとは言え、まだ抜糸はおろかドレーンも抜けてない僕に脅すような口ぶり。顔も笑ってないよ、東さん。思わず息を呑む。


「私には正直に言ってください。伊織さん、越前さんと付き合ってますよね?」


 ううっ。なんか、真壁さんみたいな聞き方する。しかも、脇腹がじんじん痛くなってきた。


 ――――どうしよう。ここはもう、言ってしまった方がいいのかも。いや、

享祐に相談もなく言っちゃ駄目だよな?


「い……痛い」

「え? 伊織さんっ!?」


 ずるいかもしれないけど、本気で傷口が痛くなってきた。僕は迷わずナースコールのボタンを押した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ