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嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
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幕間 その6


 部屋に戻るなり、享祐は台本をソファーに叩きつけた。ついでにソファーの背を蹴る。


「いてっ!」


 爪先の痛みだけが返ってきて、思わず舌打ちした。


「林田のアホが。何考えてやがる。言わない約束だったのに」


 上々の、いや上々過ぎるスタートを切った二人のドラマ。回を重ねるごとに視聴者数は伸び、話題にもなっている。

 取材も増えたおかげで今まで以上に忙しくなり、嬉しい悲鳴といったところだ。


 ――――このところ忙しすぎて、プライベートで伊織と会う時間が取れない。生まれた誤解を解く時間がないのが辛い。


 撮影はどんどん鬱展開になってて、憑依型の伊織は、現場でもどこかよそよそしい。撮影内で触れることが、享祐の唯一の癒しになっている。色んな意味で危険な状態だった。


 実際、林田監督の言うことは正しくない。だが、何のことを言っていたのかは、享祐もすぐに分かった。


 つまり、『駿矢』のキャスティングのことだ。


 元々、『最初で最後のボーイズラブ』の原作者は、相馬亮のイメージを俳優、越前享祐だと公言していた。あくまで容姿のイメージだが。

 だから、実写化にあたり享祐にオファーがくるのは必然と言える。実写化で最も手厳しいのは原作ファン。これを味方につけるためにも享祐が演じるのは最適だった。


 だが、駿矢役について、原作者はなにも言及していない。誰がやってもいいし、誰がやってもブーイングを受ける可能性があった。


『条件が一つだけあるんだ』


 オファーを受ける条件として享祐が出したのは、『駿矢』役のキャスティングについて考えを聞かせて欲しいと言うものだった。


 すぐさま林田監督は享祐との打ち合わせの場を設けてくれた。既に出来上がっていた候補者リストを前に話をするのだが、そのなかにちゃんと『三條伊織』は入っていた。


 享祐は監督と話しながら、候補者の写真を順番に手に取る。みな甲乙つけがたい有望新人たちだった。

 享祐は一言も『伊織が適任』とは言ってない。が、印象操作をしたかどうかと問われれば、多分それはあったのだと思う。だからこそ、林田はこう言ったのだ。


『君の提案を受け入れて良かった』



 ――――だけど、伊織はちゃんと候補者リストに入ってたんだ。そりゃ、俺も絶対あると信じてたけど。


 林田監督やネットテレビ局が、元子供向け番組のヒーローを多用するのは周知のことだ。それに伊織は『駿矢』のイメージとして申し分ない。候補者リストにすら上がらないなら、享祐は潔く諦めただろう。


 ――――林田はあれで我の強い監督だ。重要な役を俺の感触だけで決めるわけもない。『君の提案』云々は、俺への世辞に過ぎん。伊織には自分の実力でこの役を得たのだと、信じて欲しい。


 こんなことで妙な溝が出来ては心外だ。どこかで時間を作りたい。享祐はスマホに入っているスケジュールとにらめっこする。


 ――――次はロケか……。


 よし、と誰もいない部屋で気合を入れると、足早にリビングから去って行った。






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