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嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
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TAKE2 突然の訪問者


「え。それ本当? うん、うん。そうなんだっ! もちろん受けるよ。スケジュール大丈夫だよね?」


 春まだ浅い三月。僕は自宅のマンションの一室でスマホ片手に叫んでいた。

 会話が終わった後も興奮が一向に醒めなくて、広くもないリビングをウロウロと歩きまわり、息荒くはいた。


 ――――あの林田和樹監督から直々に声がかかるなんて。


 今までは地道にオーディションを受けて役をつかみ取ってきた。当然のように落ちることも多かったんだ。


 5年前、僕は子供向けのアクションドラマでデビューした。高卒すぐのことだったから無我夢中で走り切った一年だった。

 その後、順調に仕事はもらっていたけれど、正直パッとしたのはなかった。大抵が主人公の女の子にちょっかい出すキザ男とか、モテてると勘違いしてフラれる役とか、そんなのだ。


 主役は今をときめくイケメンアイドルが演じていた。歯痒かったけど仕方ない。一歩一歩だと言い聞かせた。曲がりなりにもこれだけで食べていけるんだから。


 それが、ついに主演だ。ダブル主演だけど、相手はあの『越前享祐』。誇らしいほどだよ。

 越前享祐は三十代半ばの日本を牽引する俳優だ。日本人離れした肉体に甘いマスク。声も振る舞いも色気満載で僕の憧れの俳優なんだ。写真集も持ってるよ。


 ――――しかも、これ、刑事のバディとかそんなんじゃない。なんとっ! 相手役なんだよっ。


 僕は声に出したくなって思わず、うおーっとか叫んでしまった。そしてソファーに身を投げ出し写真集を抱きしめた。


 次々と問題作を提示しているネットテレビが満を持して製作するのは、社会現象にもなった官能的シーンも満載なボーイズラブ小説、『最初で最後のボーイズラブ』。

 僕と越前さんは世間的には秘密にしながらも激しく愛するカップルを演じるんだ。萌えるー! あ、燃えるーっ。

 どこまで原作に忠実かわからないけど、僕はとっくに既読済み。ええ話なんだよ、本当に。

 絶対に話題になる。ネットテレビだから全世界配信だし(どこまで観てもらえるかは不明だが)、地上波なんかより刺激的だ。



『ピンポーン』


 興奮のままソファーで寝転がり、ぺらぺらと彼の写真集を眺めていると、前触れもなくインターホンが鳴った。来客だ。


 ――――おかしいな。マネージャーの東さんかな? 宅配便もなかったと思うけど。


「はい」


 僕はモニターを覗きながら小声で応じる。そこに映っていたのは、帽子にサングラス、マスクをした明らかに怪しい人物!? 

 げっ、まさか雑誌記者? 僕は無視して切ろうとした。


「あ、待て。今、切ろうとしたろ」


 聞き覚えのある声……いや、まさかな。


「はじめして、越前だ」


 彼はカメラの前でグラサンとマスクを取った。そこには、僕がずっと憧れ続けていた越前享祐、その人が立っていた。




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