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嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
20/78

TAKE16 チーズ


「カーッット!!」


 乾いた大きな音に、スタッフのため息と足音が混ざる。熱を放射するライトが一斉に落とされた。


「お疲れっ! いやあ、良かったよ。素晴らしいっ」

「いえ、大丈夫でしたか?」

「もちろん。最高だよっ。さあ、20分休憩するから、休んでていいよ」


 気が付くとまだ僕は享祐に抱きついていた。慌てて体を離し顔を見合わせる。享祐も安堵したような表情だ。

 一昨日の練習は実を結んだようでほっと息を吐く。


「飲み物どうですか?」


 ADさんが声をかけてきた。


「コーヒーもらえるかな」


 こんな一言でも享祐はクールだ。僕はメイクさんに呼ばれて乱れた髪を直してもらうことになった。二人ちらりとアイコンタクトして控室に戻る。




「伊織さん、益々凄いことになってますよっ。感動しました!」


 控室で髪を直してもらっていると、マネージャーの東さんが飛び込んで来た。頬を紅潮させて、まるで追っかけのファンだ。でも、素直に嬉しい。


「私もですよ。この現場にこれてラッキーだって思ってます。越前さんも伊織さんも滅茶苦茶カッコいい!」


 ヘアメイクさんが追随する。もう、そんなに褒め殺しされたら困るな。


「まるで本当に付き合ってる二人のようですよ」


 ――――そのフリはしてるよ。


「ですよね。キスシーンも好きが溢れてますっ」


 ――――それは……僕はそうだけど。


「来週の記者会見が楽しみですよねー。局側も張り切ってるって監督さんが仰ってましたよ」

「そうなの? それは嬉しいな。ワクワクするよ」


 一週間後、この局の会議室で製作発表が行われる。その後はそのまま撮影だ。連続ドラマも第三話を迎えて佳境に入る。


 反発しながらも惹かれていく二人が、お互いの気持ちに気付く事件が起こるんだ。

 あ、でもこれはあくまで原作の話だから、ドラマでは必ずしもそうなるかはわからない。脚本兼監督の林田さんの心づもり一つだ。




 撮影終わりに享祐が声を掛けてきた。一緒に帰ろうというのだ。


「大丈夫かな……雑誌記者さんとか」

「平気だよ。共演者同士仲良くするのはおかしなことじゃないし。でも外食より家飯にしようぜ」


 ぽんぽんと僕の頭を撫ぜるように叩いた。


「そうだね。なんか取って食べよう」


 僕らは本物の恋人同士のようににこやかに笑顔を交わす。黒の超カッコいいスポーツカーに乗り込んで家路についた。



「今日の収録の成功を祝って乾杯」

「お疲れ様っ」


 スリムでお洒落なビールグラスを二人合わす。秋口に入っても冷えたビールはやはり美味しい。ソファーにもたれて頼んだピザを食べる。これも美味い。


「美味い―」

「伊織、唇の横にチーズついてるぞ」

「ホント? ティッシュ……」

「俺が舐めてやる」

「へっ……」


 突然、目の前に享祐の顔が……切れ長の双眸が閉じられ長い睫毛がふるふると震えていた。


「あ……」


 ぺろりと唇の端を嘗められる。心臓が物凄い勢いで走りだした。当然ビールのせいじゃない。間近で目が合った。くっきりとした二重の目が僕を見てる。


 ――――享祐……。


 僕は自然に瞼を閉じる。それと知ったからか、それともお構いなしなのか。  

 それはわからないけれど、鼻の頭を通過して、僕の唇にふわりと柔らかいものが触れた。ゆっくりとお互いを食み合う。触れ合うたびに、僕はどんどんと深みにはまっていくのを感じてる。


――――享祐はどうなの? どう思ってる? これもお芝居? ドラマのため?


 僕は享祐の背中に腕を絡める。同じように彼の腕が僕の体を抱きしめた。僕らは何も言わずに口づけを続ける。

 身も心も蕩けてしまうほど……。だから、ドアを開ける音に気付きもしなかったんだ。






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