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嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
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幕間 その2


 さる財閥の御曹司。容姿、才能、家柄の全てが揃っている相馬亮(そうまとおる)が自分の役。年齢も設定も無理がない。

 しかも、彼の指向も同じだった。それを隠していることも。


 釣り合うお嬢様と結婚し、跡継ぎを得ること。それが唯一、相馬亮のまだ成し得ていないことだった。

 彼にとって簡単そうでいて、容易ではない要求。ずっと適当な言い訳で誤魔化してきたことが、いつの間にか三十路を過ぎ、さすがに待ったなしになってきた。


 ――――そこで出会ったのが、駿矢。相馬にとって眩しいくらい自由に生きてる青年だった。惹かれるよな。物凄くわかりみが深いよ。


 台本を前に、眉間に皺を寄せて焦っている伊織の姿を思い出す。享祐が『攻める』と言ったのに反応して本を落とした時は愛おしくてたまらなくなった。


 ――――あそこで青木が入って来なければ。全く気が利かない。いや、あの女史のことだ。勘づいているのかも。油断できないな。俺の気持ちを知られたら、絶対引き離される。


 今まで自分でも完璧に隠せてきたと思う。人気商売だからいくら世間が変わってきたと言っても、おいそれとはカミングアウト出来ない。自分には『セクシー』に惹かれる女性ファンが大勢いるのだ。


 ――――セクシーね。なにがセクシーなんだか。


 美女才女とのラブシーンも、冷静に対応できた。正直、ぬいぐるみとキスするのと感情的には変わりないから演技も冷静だ。

 それがセクシーに見えるのだから不思議なものだ。だが、今回ばかりは勝手が違った。


 奔放な駿矢に溺れるように恋をする相馬亮。それと同時に、彼のなかで眠っていた猛々しさがむくむくと育っていった。

 二人は憑かれたようにお互いを貪りあう。最初は駿矢が罠を張っていたかと思われた関係は、いつしか相馬がリードするように。


 ――――シーズン1は、大体こんな感じかな。二人の関係が明るみに出て逃げるとこまでやるのかな。


 林田監督からは、まだどこまで撮るのか聞いていない。続編ありきでやるか、ハッピーエンドを匂わせてまとめるか。

 監督はもう決めているのだろうか。視聴率やファンの反応を見てから決めるのか。

 享祐は当然のことながら続編ありきで原作が完結するまでやりたかった。役者としても、素の自分としても。


 ――――とにかく、私生活でももっと接近したい。まずは『享祐』と呼ばせないとな。


 深夜、帰って来た最上階の部屋、高級ブランドのソファに寝そべり享祐はワインを飲んでいる。

 暗めにライトを落とすと、窓の外に広がる夜景がぼんやりと浮かび、ほのかに部屋を彩った。


「まずは、個人レッスンといくか」


 グラスをテーブルに置き、変わりにスマホに手を伸ばした。




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