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嘘はBLの始まり  作者: 紫紺
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プロローグ


 蛍光色の緩いライトの下。マンションの一室、バスルーム横のスペースで二人の男性が鼻の頭が擦りそうなくらい密着していた。


 ひとりは大柄でガタイはいいが、足が長くいかにもプレイボーイ風。壁に腕を立てもたれかかっている。所謂壁ドン状態だ。

 押し付けられているのは、背はいくらか低いがこちらもまたすらりとしたイケメン。小さな顔に大きな目とぷくりとした唇を潤ませ、アイドル級の可愛らしさだ。


「いいのか、そんなこと言って」


 大柄な男の声は低音で、喉の中で震わせるような甘い声質だ。伏し目がちにして、若い男に視線を投げている。


「いいよ。もう……僕は……」


 挑む視線を返す。白い肌が少しずつ赤みを帯びていく。大柄な男が顎に手をかけると、ぴくりと肩が小さく跳ねた。

 桃色の唇を愛でるように、男は親指でそっとなぞる。若い男は静かに自分の腕を相手の背中に這わせていった。思わず吐息が漏れる。


「好きだ」


 言う間もなく、二人の唇が重なる。大柄な男は両手で首と顎を抱え、より一層自分の欲望を解放させていく。背中に回された腕に力が入るのを感じながら。




「カーッット!!」


 乾いた大きな音に、スタッフのため息と足音が混ざる。熱を放射するライトが一斉に落とされた。


「お疲れっ! いやあ、良かったよ。素晴らしいっ」

「いえ、大丈夫でしたか?」

「もちろん。最高だよっ。さあ、二十分休憩するから、休んでていいよ」


 ようやく体を離した二人は顔を見合わせほっと息を吐く。その二人にメイクやADが近寄ってきた。


「飲み物どうですか?」

「髪が少し乱れてるのでこっち向いてください」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「コーヒーもらえるかな」


 控室へと向かう二人に、金魚のフンのようにゾロゾロと人が付いていく。ネットテレビのスタジオは今日も熱かった。




 大柄な男は、三十代半ばの俳優、越前享祐(えちぜんきょうすけ)。身長190近い高身長で脱いでも凄い肉体派。

 セクシー俳優の名を欲しいままにし、幅広い年齢層の特に女性人気が高い中堅だ。


 もう一人は二十代前半のイケメン俳優、三條伊織(さんじょういおり)

 アクションアイドルからデビューし、昨今注目度の高い売り出し中若手俳優。


 今回、二人が演じるのはボーイズラブのドラマ『最初で最後のボーイズラブ』。かなり際どいシーン頻出のBL小説を原作にネットテレビが製作する。

 初共演となるドラマだが、その水面下では別のドラマが進行していた。





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