柚希の歌は脳が蕩ける
柚希と何度も身体を重ね合って愛を深めていく日々を続ける。
交われば交わるほど、愛は育っていく。
俺の性欲が強すぎて柚希に負担をかけてしまいすごく申し訳なかったが、行為を重ねていくうちに柚希も俺とのセックスに適応してくれた。最初は酒の力に頼っていたが、酒が入ってなくても柚希はついてきてくれるようになった。死んでもいいほど嬉しい。
俺と柚希は、カラダの相性がすごく良い。これも死んでもいいくらい嬉しい。
ずっと好きだった女の子と相性も良くてすごく気持ちよくて、最高に幸せだ。これ以上に幸せな転生はない。
しかし、俺たちはセフレじゃない、恋人だ。柚希は都合のいい女じゃない、大切な彼女だ。カラダだけの関係と割り切った都合のいい関係とかでは断じてない。
愛を育てるために必要なこと。セックスももちろん大事だが、他にも柚希とやりたいことはいくらでもある。時間がいくらあっても足りないくらいに。
夏休みもそろそろ終わりを迎える頃、今日は柚希とカラオケ店にやってきた。
カラオケデートだ。
「俺、カラオケ店とか初めてだ……」
前世でも一度も行ったことない。緊張する。
「大丈夫だよ柊斗、私に任せて」
俺の肩にポンと手を置き、ニコッと天使の笑顔を見せてくれる柚希は、俺の緊張なんかどこかに吹っ飛ばして安心させてくれる。
柚希と一緒に入店し、あっという間に部屋に入った。
さすが柚希、すごく手慣れている感じがする。
「柚希はカラオケ店よく来るのか?」
「うん、友達と一緒によく遊んでたよ」
さすが柚希。それに比べて俺は、友達いたことないからこういう遊びに誘われることも当然なかった。ぼっちの過去を思い出し泣きそうになってくる。
いや、過去は過去だ。今は柚希と一緒にカラオケに来てるんだ。いっぱい楽しんでたくさん想い出を作りたい。
初めてカラオケルームに入った。この空間に柚希と2人きりはドキドキしまくる。
カラオケルームといえばアレだろ……陽キャパリピリア充カップルがあんなことやこんなことをする空間というイメージが……
いや、今日はちゃんと歌いに来たんだ。そういうことをしに来たんじゃない。
やめろ、変に意識するなよ。カラオケにエロのイメージがあるのは単に俺がエロ動画の見すぎというだけだ。俺の心が汚れきってるだけでカラオケは決していかがわしい場所ではない、落ち着け、平常心平常心……
「……なんか、ちょっと緊張するね」
「え? 柚希は何回か遊んだことあるって今言ってたじゃないか」
「うん、よく遊んでるけど……男の子と一緒にカラオケするのは初めてだからちょっとドキドキする……」
「……!」
柚希もドキドキしてくれてるのか……俺のドキドキも二重になったように加速する。心臓が張り裂けそうだ。こんなんで大丈夫なのか俺。緊張しすぎて声が出なくなりそうだ。
ドキドキした柚希は超可愛いが俺がドキドキしてるのは見苦しいだけだからな。しっかりしろ、俺がしっかりリードするんだ。
「じゃ、じゃあ、時間もったいないしさっそく歌おう」
「うん、歌おう」
「柚希が先に歌うか?」
「柊斗が先でもいいよ」
「俺は別にどっちでも……」
「じゃあ、私が歌うね」
ドキドキと同時に、すごくワクワクしてきた……柚希の歌を聴くの初めてだからな。原作でも歌う描写はなかった。
声優さんのキャラソンとかはあって、もちろん柚希ファンの俺は耳が麻痺するくらい聴きまくったが、柚希本人が直接歌うところを見たいとずっと思っていた。
その夢が今叶う。期待と興奮で胸がいっぱいだ。
柚希はタッチパネルで操作して曲を選択し、ミュージックスタート。
『~~~♪』
! こ、これは……!
アニメ『ツンデレお嬢様と幸せになる話』のOP曲……!!
この曲を歌っているのは、苺役の声優さんである。この曲を柚希が歌ってくれるのか……! オタクの俺はテンションが爆上げした。
『愛してる♪ キミだけを愛してる♪』
ドキンッ……!!
出だしからド直球な愛の歌詞。
柚希のキュートラブリーボイスで歌われる愛の言葉に、俺はもうすでにメロメロにときめいていた。
キャラソンを聴いてたからわかってはいたが、やはり柚希、メチャクチャ歌が上手い。歌う仕草、ノリノリで歌う姿、声、何もかもがメチャクチャ可愛い。
歌の上手さは苺にも負けてない。柚希バージョンのOPも究極に最高だ。
柚希の天使の歌声で性感帯を愛撫され、天空の世界を漂う夢心地。
柚希の歌は俺の脳髄を癒し、溶かしていく。
……ん?
柚希の歌が最高すぎて気づくのが遅れたが、カラオケの映像が……歌詞と一緒にアニメ『ツンデレお嬢様と幸せになる話』の映像が流れている! 前世で観た記憶と全く同じ映像だ。
映像の内容はアニメの名シーン総集編。メインヒロインは苺なので苺メインの映像。映像の中心にいるのは常に苺ではあるが、確かに柚希も映像として映し出されていて俺は感激した。カラオケ映像でも明らかに柚希が一番出番が少なくて扱いが悪かったが、それでも俺から見た柚希は誰よりも輝いていて感激した。
新聞やテレビで得た情報は前世とあまり変わらない。だからアニメも音楽も、前世とほぼ同じようになっていると考えていいだろう。
アニメ『ツンデレお嬢様と幸せになる話』が前世と同じように2次元としてこの世界に存在し、ヒロインの1人『武岡柚希』が確かにこの世界に存在する。アニメの映像とともにヒロインが歌っている不思議な光景が今ここにある。
なんて夢のような幻想的な世界なんだ。幸せだ……無限に聴いていたい。
―――しかし、どんなことでも終わりはある。曲は3分くらいであっという間に終了した。
「うーん、点数イマイチだなぁ……」
歌い終わった柚希はちょっとだけ残念そうに微笑む。画面には確かに微妙な点数が表示されていた。
え、点数こんだけしかないのか。俺的には神を超えてたのに。俺はインフィニティの点数をつけたい。
俺はこれだけ心を動かされたというのに、柚希の歌唱力は世間一般的にはそこまで上手くはないということだったのか。思い返せば動画サイトで公開されたキャラソンも、再生数も評価も他のヒロインと比べれば圧倒的に劣っていた。
いや、他人や機械の評価なんか一切関係ないのだ。誰が何と言おうと俺は好き。天に召されるほど柚希の歌が好き、それだけでいいんだ。
「柊斗、私の歌どうだった……? って柊斗!? 大丈夫!?」
柚希の歌に魅了されすぎた俺は溶けてスライムになった。
本当に最高の神だった。このまましばらくスライムのまま余韻に浸っていたい……
……いや、待て待て。スライムになってる場合じゃない。柚希が歌ってくれたんだから拍手くらいしろよ、失礼だろう。
「ああごめんっ、柚希の歌すごくよかった! 最高だった!
あまりにも最高すぎて人の形を保てなくなっちまったよ」
そう言って俺は柚希にたくさんの拍手を送った。
「あはは、何それ。おもしろいね柊斗」
おもしろい……褒め言葉と受け取ってもいいよなそれは。
「ホントに最高だった、聴かせてくれてありがとう柚希」
「うん、こちらこそ聴いてくれてありがとう、柊斗」
柚希は顔を真っ赤に染めて照れくさそうに笑った。可愛すぎる。




