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なんで不人気なんだよ

 そもそも柚希はなんで不人気なんだよ。

こっちが聞きてぇわそんなもん。あんなに可愛いのに。俺の中じゃぶっちぎり一番のヒロインなのに。


柚希がなんで不人気なのか、改めて徹底的に分析したい。

柚希を人気ヒロインにするためにはなんで不人気なのかをしっかり理解しておく必要がある。


俺は前世で柚希の詳しいデータをノートにまとめていた。

絶対に人には見せられない、黒歴史にも程があるノートだが、なぜかこっちの世界にもあるんだ。

自分の部屋の机の引き出しの中にあったわ。なぜかはわからん。マジで黒歴史だからなくなっても構わなかったのに。むしろ消えた方がよかったのに。

まあ捨てるのもちょっともったいないしあるもんは仕方ないのでせっかくだから読み返してみる。



 柚希が不人気になってしまった理由、まず一番の理由としてはやはり()()()()()()()というのはあるだろうな。

ヒロイン全員が平等で公平な扱いなんてことは無理なのはわかっているが、柚希に関してはあまりにもフェアじゃねぇな、と思う。


何度も何度も言っているが、彼女はお色気要員だ。エロしかとりえがない、みたいな扱いを受けている。

ストーリーを進める上で()()()()()()()()()()()()()ポジションのキャラだ。柚希の出番全部削っても物語は成立する。エロだけがとりえとされているのはそういうことだ。


この漫画、基本的にシリアス多めだがたまにギャグもやる。柚希の出番は大体そのギャグ回に来る。出番が来たらお約束のラッキースケベ連発でほとんど脱がされる。

『とりあえず脱がしときゃいいんだろ? それだけで読者は喜ぶだろ?』みたいな作者の考えが透けて見える。



 次に、()()。こればかりはどうにもならない残酷な問題。

他のヒロインは全員女子高生だ。柚希だけが女子大生だ。

女子高生と女子大生、選ぶならどっち? と言われたら女子高生の方がかなり有利だろう。女子大生がダメというわけでは決してないが、女子高生という存在そのものが強すぎる。

何より制服のアドバンテージがでかすぎる。エロビデオだって制服系が超人気だし、男はロリコンが多いしどうあがいても年齢が若い方が人気出やすい。少年漫画ならなおさらだ。年上のお姉さんキャラも需要が強いはずだが、やはり少女キャラの方が万人受けしやすい。



 さらに扱いが悪いと感じる理由としてはキャラクターとしてどうなんだ? って思うところもあることだ。

キャラの作り込みが甘い。もっとよく考えて練り込んでキャラを作ってほしいのに、柚希だけ適当に作った感じがあるんだ。設定厨の作者のくせに。


柚希は確かに可愛い、美人。スタイルも良い、性格も良い。甘いものが好きだったり、年上のお姉さんなのに子供っぽいところがあるところも可愛い。

だがそれだとヒロインっていうよりヒロインの姉妹とかヒロインの友達とか、完全に脇役じゃねぇかって感じがある。


物語のヒロインっていうのは可愛いだけじゃダメなんだ。読者を共感させるストーリー、魅力を上げるストーリー、そういうものが必要になる。そうじゃねぇと物語のメインになれんわ。



たとえば苺は、名家のお嬢様として自分の家の未来を背負い、家をさらに強くしていくストーリーがある。

婚約者である柊斗も深く関わる。原作では柊斗と苺の2人で力を合わせて名家にありがちないろいろな修羅場を乗り越えていく。お嬢様系にありがちな厳格な父親との対立イベントとかもあるが柊斗の活躍で和解させる。

最終的に柊斗の家も苺の家も超パワーアップをして、苺と結ばれるというストーリーがある。


梨乃は恋が報われることはないが弓道と真剣に向き合い、一生懸命練習を重ね、ケガやスランプみたいなイベントもあるが根性で乗り越えて、仲間やライバルと競い合いながら成長していくというスポ根的な熱いストーリーがある。


桃香は恋が報われることはないが小説家になる夢のために一生懸命努力している。

しかし家庭環境が悪く、父親は亡くなってて母親ともうまくいってない描写があり、さらに内気な性格からか昔いじめられていた過去を持っている。それでも挫けず諦めずに努力を続けて最終的に夢を叶えるというサクセスストーリーがある。



そして柚希は……特になし。

女子大生で、1人暮らしをしてて、アルバイトもしている。それだけ。普通か。

悲しい過去もないし、そこまで裕福ってほどでもないが家庭環境も良好で何も不自由なく育った普通の女の子。夢や目標みたいな読者を盛り上げやすいようなものも特にない。

古いアパートに住んでいるが、貧乏とかじゃなくてオシャレに金を使いたくて家賃を安く抑えてるだけ。

アルバイトをしてるといっても創作物にありがちな病弱な弟や妹を養うため……みたいなこともなく、オシャレのために金が欲しいからやってるだけ。

ただのごく普通の女子大生だ。ヒロイン力が足りない。


何もないならこれからいろんなことを吸収して非凡なヒロインに成長させていけばいいじゃないか、って話だけど原作ではそういうのも特にない。

ストーリーの基本って()()だろう。進化にしろ退化にしろ、キャラクターが最終的にどうなったか、どう変わったか、が一番重要だろ。

なのに柚希は初登場から最終回まで特に()()()()()()()()()()()。最後まで何もない脇役なまま、負けヒロインになるだけだ。


普通で平凡だからこそいいんだろうが。普通の年上のお姉さんがとても優しくて笑顔も可愛くて幸せそうに食べて、そういうところが好きなんだよ!

……と俺は思うのだが、やはりどうしても影が薄くなり、読者の共感も得づらいというところはある。


読者を盛り上げるストーリーがない柚希の役割はマジで()()()()だ。

お色気でテコ入れするためだけに起用され、ギャグ回で脱いで媚びて汚れ役とかやらされて、用済みになったら早々にフラれて退場するだけだ。

それくらいだな。それ以外はないわ。マジでそれ以外に彼女の見せ場はない。


お色気で読者を釣りたい、それだけのためのキャラ。俺の推しは間違いなく扱いが悪く不憫だ。



 柚希が不人気な理由、まだある。

扱いが悪いけどそれだけならむしろ人気は出るんじゃないかと思う。不憫萌えみたいなのもあるし。


単純に()()()()()()んだ。


まず初登場の時点で他のヒロインに置いてかれてる。スタートダッシュの時点でもうすでに圧倒的に不利。


苺と梨乃は原作の第1話から登場している。この時点でメインヒロインが決まっており、この2人が作品の中心になって物語を進めていくことがわかる。

桃香も第5話から登場している。サブヒロインではあるが序盤からこの漫画のヒロイン候補として活躍している。



では、柚希の初登場は何話か。


45話だ。


遅ぇよ。まず出るのが遅ぇんだよ。

この漫画は週刊連載だが、そろそろ連載1周年かな~というところでやっと出てきたよ。周回遅れかよ。

そんな遅く出てこられてもその頃にはもう他の3人の人気が盤石になってるだろうが。そこから人気を覆すのはかなり厳しいだろうが。


そこそこ連載続いて、マンネリ防止のためにお色気テコ入れしよう、ということで出したのが柚希というわけだな。

作者の初期構想にはなかった後付けヒロイン、後発ヒロイン、数合わせヒロイン、そして当て馬……いや当て馬にすらなってない哀れな負けヒロイン……悲しい。


バトル漫画ならともかくラブコメ漫画で出番が遅いのは致命的だよ。

ラブコメは基本的にそこまで長期連載するジャンルじゃないからな。45話なんて下手したら中盤終盤になってたりするぞ。


単行本でいうと初登場は6巻。

他のヒロインはみんな1巻から出てるのに、柚希だけは6巻まで待たないと出ない。


この漫画は全部で155話。全17巻。

この漫画の3分の1くらいは推しがいない。


いや待てよ。柚希は14巻で負けヒロインになってその後ほとんど出番がなくフェードアウトした。一番遅く登場し一番早く退場した。

6巻で出て14巻で退場。彼女のまともな出番は6~14巻の9巻分。

全17巻だからほぼ半分じゃねぇか。ナメてんのか。

最初から出てるキャラとか最後まで出てるキャラとかならまだ印象に残るだろうが、途中から出て途中でいなくなるんじゃなぁ……


そりゃ人気投票もメチャクチャ不利だわな。

3回目の人気投票じゃ最下位な上に大差をつけられたと言ったが、第3回をやる頃にはもうすでに負けててフェードアウトしてる。そもそも出番ないんだからそりゃ人気出るわけないわ。



「はぁ……」


俺は黒歴史ノートを閉じる。

グダグダダラダラと長い長い愚痴を言ったが、全部言い訳なのはわかってる。


扱いが悪くても出番が少なくても人気があるキャラはいくらでもいる。

いくら言い訳したって推しが不人気なのは事実で、それを意地でも認めようとしないのは逆に俺にダメージが入る。


いくら不人気でもどんなにバカにされても、最後に柊斗と結ばれたら……勝てたらどれだけよかったかと何度も考えた。


しかしそれこそ無理だ。ヒロインレースで周回遅れし、お色気で迫るだけ……勝てるわけなさすぎる。無理ゲーすぎる、絶望しかない。



「…………」


俺は自室のベッドに寝転がる。


「……柚希……」


好きな女の子の名前を呟く。

他の女の子の家で何言ってんだろうな俺は。でも今は言わなきゃ気が済まないんだ。

作者にとっては思い入れがないかもしれないが、俺にとって彼女は生きる希望だから。前世でも、今でも。



俺は覚悟を決めた。

このラブコメの主人公になったからには、推しヒロインを幸せにして人気ヒロインにしたい。いや、してみせる。


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