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ひとめぼれ

作者: おーばる



エキナカで足が止まった


目が やわらかい橙色(だいだいいろ)の大輪の花から離れない


吸い寄せられる様に花の元へ向かう


この花が自室に()るのを想像して

ともて やわらかな心地(ここち)になった


咲き誇っている一輪を買い求め

大切に胸に抱え 家路(いえじ)につく


似合う花瓶を探し 一等席に置く


その光景に 心が温かくなった




翌日

帰宅後すぐに花瓶の水を替え 茎を少し斜めに切った

一日でも長く 咲いて(とも)()って欲しかった


数日()つと

外側の花びらが枯れ始めた


せめてもと

美しいところだけを

接写で撮り画像に(のこ)した


思い出が 残される者にだけ増えていく





マンションのベランダが誘惑する

ふらりとベランダに出て 手すりにもたれる

視線の先に 暗闇に浮かび上がる港の(あかり)が 遠くに見えた


“いってきます” 笑顔のあなたに

“お帰りなさい” 言えぬまま


(つら)いからと引越したのに

港の見える部屋を自ら選んだ


ぼんやりと 冬の海の冷たさを想像する

あなたの いるところを

わたしが いきたいところを


ベランダから 部屋の中の花を見る


初めてあなたがくれてから 特別になった花

毎年贈られ 年を重ねるのが楽しみだった

片手で途切れ 記憶の奥に 見ないように閉じ込めた





部屋に戻り明かりを消す

ベッドに横になり目を閉じて


ふと 花を見た




カーテンの隙間から 光が暗闇を切り裂いて

枯れ始めて(なお) ()()ぐに咲く花を

サーチライトのように 照らし出していた





その光景に


涙が するりするりと 流れ落ち


(こご)えていた心の欠片(かけら)が 温かくなった











遠慮のないポイント評価、心のままにお願いします。






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