となりの席の土浦くん
となりの席の土浦くんはよく笑う。いわゆる、爽やか系ってやつ。大きな口に、健康的な歯がよく似合う。鼻筋が通っていて、とてもきれい。
きっとモテる。彼の周りにはいつも人がいるし、遠くの席からわざわざ声を掛ける女の子もいる。
彼は学級委員だから、教卓に立つことも度々あった。姿勢もよくて、人前でも堂々としている。それでいて屈託なく笑うから、威圧感もない。彼のおかげでわたしたちのクラスはまとまっている。
わたしは引っ込み思案な性格なので、土浦くんと話したことはまだない。でも、となりの席になったからには挨拶くらい交わしたい。そう思っているうちに、一週間は過ぎてしまった。
月曜日、新しい朝がくる。
学校のトイレに着いて、鏡の前で前髪を整える。まだ誰もいない廊下を歩き、いそいそと自分の席に座る。
十五分後、教室のドアが開いた。土浦くんだ。
わたしはスマホから目をあげて、ドアのほうに顔を向ける。土浦くんと目が合った。
キラキラと水のように光を反射するきれいな目。思わず挨拶を忘れてじっと見つめてしまった。
土浦くんが不思議そうに口を開く。
「あ??なに見てんだブス」
いつもの朗々とした声で言い放つと、となりの席には座らずに、踵を返してどこかに行ってしまった。
土浦くん。
土浦くん、好き。
好きなの。