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1話 始めての失敗

『ヤンデレ』……それは神聖なものであり、全ての人類が信仰すべき尊き存在。


 ヤンデレは、好意を抱いた相手に異常な執着と独占欲を見せる。



 俺は、そんなヤンデレに愛されたいという願望があった。


 これは俺の性癖でもあり、俺の願いでもある。


 ヤンデレに愛されるためなら、俺は何だってできる。



 あのハイライトの消えた狂ったような瞳で、想い人をどこまでも追いかけてくれるような。


 想い人のためなら、どんな犠牲も厭わず、他の女と喋るだけで勝手に包丁の方に手が伸びてしまうような。


 毎日食事を作ってくれるものの、自分以外の料理を食べることに嫌悪感を抱くことになり、最終的に自分の作った料理しか食べないように拘束してくるような。



 そんなヤンデレが大好きで、実際俺もそんなヤンデレに愛されたかった。



 しかし、現実は残酷だ。


 適当にのほほんと生きていても、ヤンデレは現れたりしない。


 そう、俺から行動を起こす必要がある。


 それに気づくのに15年がかかった。


 あまりに愚かすぎる。


 幼少期こそ、ヤンデレを覚醒させる絶好な時期だと言うのに。



 いや、過去を後悔しても意味は無い。


 見るべきは未来だ。



 今日から、俺はどうにかしてヤンデレに愛されてみせる。


 自分から動くんだ。



 ================



 さて、今日はヤンデレに愛されたいと思います。


 とか、そんな軽い気持ちでヤンデレが愛してくれる訳ないだろ!


 そんなことは分かってる……。


 そんなことは俺が1番分かっていた。


 だから、今回は最新の技術を使用して、ヤンデレに愛されたいと思う。



 それは近年話題になってきたテクニック……


 それは『どしたん? 話聞こか?』というテクニックである。



 寂しそうな表情をしてる女の子にとりあえず『どしたん? 話聞こか?』と尋ねると、その子はたちまち心を開き、まるで家族のような関係になれるらしい。


 素晴らしい。


 ヤンデレに愛されたい俺にとって、最高の技術である。


 話を聞くうちに、何故か、その人のことしか考えられなくなり、その人の行動や人間関係を全て把握してしまい、最終的にはただのヤンデレストーカーになってしまう。


 そんな展開も、十二分に考えられることだろう。


 幸いなことに、この技術はあまり世間には出回っておらず、今のうちは何度も使用可能なチートスキルらしい。



 俺は、その技術を完璧に習得してきた。


 家で何度も復唱してきた。


 多分、行ける。


 そういう確信があった。



 さて、計画を遂行するために俺がやって来たのは、みんな大好きな集合居酒屋。


 ここではありとあらゆる寂しそうな表情をする女の子が見れます。


 正直、それだけで通う価値のある素晴らしい空間なのだが、俺の今回の目的は違う。



 そう、ヤンデレに愛されるため、俺はここに来たのだ。



 さて……寂しそうな表情をしている子はいないかな……?


 ん? あそこに寂しそうな顔の美少女がいるな……。



 金髪碧眼……まるで絵に書いたような正統派美少女。


 一般的な女性と比べれば、やや高いであろう身長と、腰まで伸びた綺麗な金髪。


 そして、目を見張るのは、彼女が机に立てかけているのは黄金の輝く剣。



 妄想するとすれば……彼女は騎士団の団長で、その重責に耐えられず、どうにか酒で気分を誤魔化している。


 そして、彼女は『どしたん? 話聞こか?』と話しかけられ、まんまと心を開き、ヤンデレルートに落ちてしまう。



 か、完璧だぁ……。


 我ながら恐ろしい展開把握力だ……。


 よし! よし!


 行くぞっ!!



「────ど、どっ、ど、どした? 話聞こか?」


 俺はとっておきのテクニックを真っ先に披露し、彼女に先制攻撃を放つ。


 居酒屋のテーブルに座っていた少女は、意表を突かれたような表情をする。


「あ、あなたは……」


 狼狽えながらも少女は俺にそう尋ねる。


 お、おかしいな……これを言えば、心を開いてくれると教えて貰ったのだが……。


 この子は全く心を開くどころか、何なら警戒している様だった。


『どしたん? 話聞こか?』だけで心を開いてくれるものと思っていたが、どうやらそうでは無いらしい。


 ここから先は己のスキルが試される。


 そういうものなのか……。


「そ、そ、そ、そうですね……あっあっ……あ、あははは……そ、その、なんか……悩んでそうな顔をしてらしたので……」


 俺は明らかに緊張と動揺を隠せず、言葉に詰まりまくりながら言った。


 俺の目の前の少女の表情を見ると、今にも逃げ出したそうな顔をしている。


 どうして、俺はこんなに人と会話する時に動揺してしまうのだろうか……。


 明らかに、この少女は俺に不審感を覚えていることだろう。


「悩み……そうですね……。私も悩んでいるのかもしれません……」


 そんな挙動不審な俺に対し、少女は先程までの動揺から一変し、冷静にそう呟いた。


 よし、相手はとりあえず乗ってきてくれた。


 この人優しいな。


 さて、ここからは俺のプレイスキルが試される……。


「で、ですよね……。分かります。あなたは……とても大きなものを背負っているんですよね」


 俺は適当に『何かを分かった風』に頷く。


「えっ……どうしてそれを……」


 少女は目を見開き、あからさまに動揺している様だった。


「ふ、ふふ……そ、そりゃあ、わ、わ、分かりますよ。誰にも言えないことなんですよね……」


 俺は適当に分かっておく。


 そうすれば、何とかなりそう……頼む、何とかなってくれ。


「あなたの言う通りよ……。私……そうなの……本当にすごく悩んでるの」


 すると、少女は急に豹変し、頬を真っ赤に染め、俺の袖を掴んできた。



 き、来た……のか……?


 釣れた……?


 まさか、一発目からヤンデレの素質を持つ子が現れてきてくれたのか!?


 ありがとうございます……ヤンデレの神様……。


 俺が心の中でヤンデレの神様に感謝した瞬間だった。


「私……うう……えぐっ……ううう……」


 目の前の少女は急に泣き出してしまったのだ。



 な、な、な、な、なんだこれはっ!?


 泣いた? え? 俺が泣かせた?



 その瞬間、俺の頭に過ぎる幼少期の記憶。


『──ああ! 泣かせちゃった〜!! 先生に言ってやろ〜!!』


 ま、まずい!!


 女の子を泣かせるということは、世界を敵に回したも同然だ。


 それは絶対の方程式であり、どんな状況でも覆ることは無い法則。


 つまり、今、俺は世界の敵なのだ。


 どうやら、計画は失敗みたいだ。


 と、とにかく泣き止ませないと……。


「す、すみません。どうか、泣き止んでください……」


 俺は少女にハンカチを手渡す。


「なら……付き合ってよ……私の愚痴に……」


 すると、少女は手渡したハンカチを強引にひったくり、そう言った。


 愚痴に付き合う……?


 そんなことで許されるのか!?


「ぜ、是非! 聞かせてください!!」


 俺は少女に許してしまうため、必死に彼女の愚痴を聞くことにした。



 ================



 その後、俺は少女の愚痴というものを聞き続けた。


 内容はよく覚えていないが、なんか責任とか期待とか、俺にはあまり理解できない愚痴だった気がする。


 その後、俺は少女から解放され、帰路に着いた。



 帰路の途中、俺は少し立ち止まり、空を見上げた。


 空にはキラキラと輝く星々が浮かんでいた。


「ヤンデレに愛されるって……難しいな」


 まるで輝く星のように……。


 今回で俺は身に染みて実感した。


 今回のように、相手に踏み込みすぎると泣かせてしまうこともある。


「それでも……諦められないよな……」


 俺は失敗を糧に、次こそはヤンデレを作り出すことを心に刻んだ。



 ===============



 彼がいなくなったテーブル席で、私は高鳴る心臓の鼓動に動揺していた。


「な、なに……? どうしてこんなに心臓がバクバクって……」


 少女は不可解な生理現象を感じていた。


「あ、あの人と話してから……ずっと止まらない……」


『どしたん? 話聞こか?』と意味不明なことを言いながら、あの人は急に話しかけてきた。


 私に悩みがあることを的中させ、私の愚痴を全て聞いてくれた。


 今まで誰にも話さなかったこと。


 私の不安を全て吐き出した。


 何故か、涙が止まらなかった。


 私は騎士団の団長として、日々過酷な業務と、上からの重すぎる期待をかけられていた。


 そんな私の重りを、全て外してくれるかのような……。


「あ、あの人って……どこに住んでるんだろう……」


 私は変な気持ちになって、変な欲望が湧いて出てしまった。



 あの人のことが知りたい。


 あの人の家が知りたい。


 あの人の性格を知りたい。


 あの人の……全てを知りたい。



 この感情を抑えられず、私はいつの間にか居酒屋を飛び出し、彼の跡を追っていた。





「────えへっ……ふふっ……あそこが……あの人の家……」

展開が下手くそすぎる……!

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