凶器と動機が重なる所(1)
(1)
全員で一階の食堂に集まった。時間はもう21時を回っていた。
何はともあれ、皆お腹が空いていた。縦長のテーブルを囲って皆で食事をした。
しかし、この中に犯人がいる。そんな緊張感の中、皆ほとんどご飯が進んでいない。
この重い空気のせいか、失礼だがまるでキャベジンでも入れたかのような味だ。
まさか毒でも入っているのか。突然胃袋を握りつぶされるような緊張が走った。
「この料理を作ったのは誰ですか?」
「わ、わてです!」
焦った表情を浮かべながら手を挙げたのは広瀬だった。
「大丈夫ですよ。平山様が何を心配しておられるからはご察し致します。
ですが、料理をしているとき私も一緒にいました。この料理は安全です。」
執事の松本が付け加えた。2人がかりで作ったと言うことだろうか。
ただ、広瀬が手を挙げたように彼女がメインで作ったのだろうか。
まだ若いメイドなのもあってか、それほど料理の腕が立つわけでもないが
緊張している中作ったと考えると普段の力量が出せなかったのだろう。
「こ、これはもっとマスタードを入れたら美味しくなりそうな気がします。
なんとなくですが」
いきなり割り込んで喋り出したのは謎の男、誠也だった。
何を言い出すかと思えば、俺よりも無粋なことをよく言えたものだ。
全く料理人でもない謎の男にそんなこと言われたくないものだ。
なんとか皆口にご飯とカレーを流し込み、さあこれから皆どうしようかという時楓が一言声を出した。
「パパが「ごちそうさま」を言ったらそこから皆で解散だったんだけど…」
どうやらここの食卓では、この家の主人である父親が食事時の幕を引いていたらしい。
「そうですな。この場合、実質的な主人になられますわ長女である七恵様かと存じますが…」
執事も困った表情で話した。
「わかった。パパの代わりに私が言うわ。じゃあ「ご馳走様でした」」
お姉さんはすかさず言った。そう、主人である父親が亡くなった以上、この別荘の所有権はおろか
莫大な遺産も、高級ブランドの『コダイク』社も全て彼女のものになるのだ。
「さて、皆、夕方の19:00にパパが発見されるまで、どこで何をしていたのか聞かせてちょうだい。
アリバイを確かめるわ。」