ようこそ横山家の別荘へ(8)
(8)
「皆さん早くきてください!」
俺たちが駆けつけたのは玄関とは真反対の位置にある浜辺だ。
そこにはお姉さんと執事、そして2人に抱え上げられながら歩く知らない男がいた。
男は全身が濡れており、どうやらどこからともなくこの島に漂流してきたようだ。
ただここは絶海の孤島、ものすごい奇跡的な確率である。
「ねえ、あんたたちも手伝って!」
俺と楓で意識を失いかけている男の両足を背負い、広瀬は扉を開けてくれた。
なんとか別荘のエントランスにあるソファに横たわらせた。
わずかに意識のあった彼は広瀬が取ってきた飲水を飲み干し、口を開けた。
「こ、ここはどこだ?わ、私の名前は、せ、誠也。だったかぁ?」
「誠也さんって言うんですね?大丈夫ですか?もしかして記憶なくしてますか?」
広瀬が誠也の面倒を見ている最中、俺たちは彼が何者なのか話し合った。
しかし、誰も「誠也」という名前に聞き覚えがないそうだ。
執事の話によると、おそらく近くを通った客船から落ちてここに流れ着いたのではないかと言った。
「でも、もし近くに来る船から落ちてここに辿り着いたんなら救助ヘリがここまで来るはず、
俺たちもそのヘリに乗せてもらってここから脱出できるかも知れないな!」
確かに楓の言う通りである。この謎の男誠也の安全はとりあえず確認できた。
しかし、俺たちにはまだやらないといけないことがある。
それは犯人を見つけ、捕まえること、そして無事に生き残ることだ。
だが俺にはそれ以上に焦っていることがった。
自分の部屋のベッドの下から見つかった凶器。あれは確かに血のようなものがついていた跡があった。
もしあれが横山コウダイを刺した凶器だとしたら、あんなものが俺の部屋が見つかれば真っ先に俺が疑われる。
だが、もし俺が言わなかったとしてもアレを罠として仕掛けた犯人は今も俺のことを心の中で笑っているはずだ。