ようこそ横山家の別荘へ(3)
(3)
「あの、すみません、松本さん、あのハサミの場所は…?」
それはメイド服を着た俺よりも少し若そうな少女だった。
俺が彼女の目を見ているとそれに気づき手前に出て彼女もまたお辞儀をした。
「あ、楓坊っちゃまのご友人の平山様ですね!
わてはここでメイドをやらせてもらってる広瀬というものです!あの、よろしくお願いします!」
聞き覚えのない一人称だ。なんだか緊張しているようだが、
彼女にキラキラとした眼差しを向けられて俺の方が緊張してきた。
ただその引き込まれるような瞳の奥に何か濃い暗闇を感じた。
まるで何か不安なことでもあるかのように。
「では、私はこれで失礼します!平山様がご訪問に来られたこと、ご主人様にもお伝えしておきますね。」
俺が声をかけようとした時には彼女はもういなかった。
振り返った時になびいた髪からはうっとりとするような香りがした。
これも『コダイク』ブランドのパルファンの香りなのだろうか。
そういえばご主人様にお伝えしますと言っていた事を思い出した。
これほどの別荘を持つ社長、一体どんな人物なのだろうか。
妄想にふけていた俺のモヤモヤは、一気に漠然とした不安にかき消された。
「まあとりあえず別荘の中を案内するね!まずは一階から!」
俺は楓に言われるがままに別荘の中を案内された。
とても普通の人が住めるような金額の建物ではないが
作りは意外にもシンプルだった。
一階は限界の正面に二つの二階に上がる曲がりくねった階段があり
その間には食堂へと繋がる大きな扉があった。
左右にはそれぞれ廊下に繋がる扉があり、左右のその廊下の先にはそれぞれ部屋があった。
右側には執事の松本とメイドの広瀬の部屋、左側には姉の部屋と隣の部屋は客室らしい。
そして二階には上がっていないが見た感じ部屋は二つ、おそらく父親の部屋と楓と部屋といったところだろう。