ようこそ横山家の別荘へ(2)
(2)
「やあ!よく来てくれたね!横山家の別荘へようこそ!」
扉を開いたのは楓だった。そこは絶景にポツンと聳える孤島、その上に建てられた二階建ての別荘だ。
ここまで来るのにわざわざプライベートボートまで用意してくれるなんてどんだけ金持ちなんだよこいつ。
「まあまあ、とりあえず上がってくれ!あ、そこ段差あるから気をつけて!」
俺は楓からの忠告を聞く前に段差を踏み外した。しかし誰かが俺を支えてくれてこけずに済んだようだ。
「おっと!お気をつけください平山様、ご来客に怪我されては困りますからな。ふっ。」
今鼻で笑われた?!
俺の手を握っていたのは白い手袋をしたタキシードの老人だった。年齢は60代と言ったところか。
体格の良さと、こけそうになった俺を瞬時に支えられる動体神経はとてもその年齢のものとは思えない。
「松爺!ほら、あいさつあいさつ!」
楓が挨拶を促すとその老けた男は会釈をして口を開いた。
「これは申し遅れました。私、この別荘で執事をさせていただいております松本と申します。
ポ、ポコ、お坊っちゃまのご友人と聞いておりますので、本日はなんなりとお申し付けください。」
彼が会釈をしていると後ろからちょうど俺と同じくらいの背丈の何者かの影が見えた。
「あの、すみません、松本さん、あのハサミの場所は…?」