ようこそ横山家の別荘へ(1)
第1章:ようこそ横山家の別荘へ
(1)
俺は平山雄都、なんの変哲もない大学生だ。
性格は大人しい方だ、そのせいか彼女もいたことがない。
なんか面白いことでも起きないか、今日も大学へ向かっていながら
そんなくだらないことを考えていた。
「おーい!平山!明日俺んちの別荘に来いよー!」
このうるさいのは横山楓、父親が有名高級ブランド『コダイク』の社長で
簡単に言えば、大して苦労もしないでここまで来た明るいだけのボンボンだ。
口癖は「お金で手に入らないものはない!」なんともまあ傲慢なセリフだ。
それが父親から教わったことらしいが、一体どんな父親なんだか、、、
そんな俺とは真反対とも思えるこいつだが、その割に彼女はいないらしい。
そしてなんだかんだ大学で俺の唯一の友達と呼べる存在だ。
「聞いてんのかー?別荘だぞ別荘?後で行きたくなって”ベソ”かいても知らねえーぞ!」
「今の聞かなかったことにしっちゃあ」
急に寒気がした。別荘という言葉にざわついていたオーディエンスも一斉に静まり返った。
こいつに彼女がいない理由もなんとなくわかる気がする。
そして俺に友達が増えないのも、こいつがいるからかもしれないと思えてきた。
「そうか、じゃあいい事を教えてやろう!だだん!なんと!
別荘には俺の姉さんも来る!あとメイドさんもいるぞー!どうだ?行きたくなったか?」
「考えとくよ」
自分で効果音をつけてまで必死で勧誘するこいつを見てると、言ってやらないこともないと思った。
別に女の子が来るからとかそういった不純な動機では一切ない。
この時の俺はまだ、別荘で”あんなこと”が起こるなんて予想だにしなかった。