第七話
天文五年 (一五三六年) 十月 播磨国 飾東郡 御着城 小寺氏館
「孫四郎様、上鈴村に不気味な牢人がいると言う噂がありますが、何かご存知ですか?」
そう言って重隆が聞いてきた。
「何だその噂は。不気味とはどう不気味なのだ?」
「何でも、その牢人は色黒で容貌醜く、隻眼、体に無数の傷があり、足が不自由で、指もそろっていないとのことです。ですが何故か子供達に寺で算術等を教えているとの事です」
「算術を教えているのだから、悪い奴ではないだろう。だが気になるな。上鈴村に行くぞ」
「孫四郎様、分かりました。供回りを呼んできます」
天文五年 (一五三六年) 十月 播磨国 飾東郡 上鈴村
左衛門が入り口に立って待っている。
軽く談笑してから左衛門が言った。
「孫四郎様、噂の牢人の所まで案内させて頂きます」
ついて行くと寂れた寺があった。そして噂の牢人と思われる男の周りには子供達がいた。
確かに噂の牢人と思われる男は色黒で容貌醜く、隻眼、体に無数の傷があり、足が不自由で、指もそろっていなかった。だが、それは戦によるものだと言う事はすぐ分かった。
「そなたが噂の牢人か?」
そう聞くと
「その牢人が色黒で容貌醜く、隻眼、体に無数の傷があり、足が不自由で、指もそろっていないのであるならば、儂の事ですねぇ。貴方は小寺家のお侍さんですかな?」
「そうだが。そなたは此処に何故来たんだ?」
「儂は東国の方の生まれでしたが兵法を学ぶ為に京に行って兵法を修めたのですが、見ての通りこの様な見た目ではなかなか仕官する事が出来ず、諸国を放浪していたのですが、此処小寺家が治める領地は此処三年で、とても豊かになったと聞きまして。そして豊かになった理由が七歳の小寺家の嫡男と聞いて興味を持った為、此処に来たのですよ。」
そこから男の諸国を放浪していた時にあった話、諸国の情勢、兵法について話した。そして、この男が話していた事が嘘では無いという事が分かった。
「そなたさえ良ければ小寺家に仕えてみないか?」
男はとても驚いていた。そしてこう聞いてきた。
「小寺家は不気味な男でも雇って貰えるのですか?」
「俺はそなたが欲しい。だから、そんなの関係ない」
すると男は頭を下げて。
「儂を此処まで買ってくれたのは貴方が初めてです。
どうか儂を小寺家に仕えさせては貰えませんか?」
「良かろう...。そういえば、お主の名は?」
「山本勘助と申します」
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