第十一話
天文六年 (一五三七年) 三月 播磨国 飾東郡 御着城 小寺氏館
重い沈黙が流れた。
「殿、此処は恥を忍んで尼子に降りましょう。」
沈黙を破って、そう発言したのは譜代の家臣である江田善兵衛だ。
「江田、貴様尼子に寝返っておるのか!」
そう声を荒げたのは同じ譜代の家臣、小河良利だ。
「何を言うか!一万三千の兵に二千四百の兵で勝てるものか!ならば、今は早く降ることで国力を温存した方が良いだろう!分かったか?脳筋野郎!」
「何だと、この軟弱者!」
「両名、落ち着かんか!」
父上が怒鳴った。
「今は非常事態であるぞ!」
「「感情が昂ってしまい、申し訳ございません。」」
「父上、敵は恐らく揖保郡を通って攻めてくるでしょう。なので鶴觜山と夢前川に陣を敷して、尼子軍本陣が川を渡る時に鶴觜山から奇襲を掛けては、如何でしょうか?」
「孫四郎、それでは三木氏を見捨てる事になるぞ。」
「父上、万全の状態の尼子軍相手では我らは勝つ事が出来ません。そこで三木氏に尼子軍を消耗させます。」
「だが、もし三木氏が尼子に降ったらどうする?」
「足利尊氏から感状を貰い幕府の直臣気取りの三木氏が、成り上がりの尼子に降ることは無いでしょう。」
「であるな。では、儂が夢前川の陣の指揮を取り、策を立てた孫四郎が奇襲部隊を指揮しろ。」
「父上、奇襲部隊はどれくらいの兵力になされますか?」
「奇襲部隊を八百、夢前川の部隊を千六百にする。」
「父上、夢前川の部隊が少なくありませんか?恐らく本陣は最後に渡るので少なくとも一万の兵と戦わなければならないのですよ?」
「孫四郎、父を舐めるで無いわ。それくらい持ち堪えて見せよう。それに、奇襲部隊が少なければ返り討ちにあうだろう。他に何か無いか?...無いのであれば軍議はこれで終いだ。皆の者、出陣だ。」
「「「「応!」」」
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