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おばちゃんが暴走した時のエッセイ集

現実世界の食卓から〜異世界に「リンゴ」を持ち込めるのなら〜

 ファンタジー世界にどこまで「現実世界の食卓」を持ち込んでいいのか。小説を書く上で、とっても悩ましいのが、この「食材」や「食文化」の持ち込みボーダーについて。


 具体的に申しますと、架空のファンタジー世界でも「リンゴ」を「丸くて赤いバラ科の果実」として登場させていいのかどうかについて、おばちゃんは最初、とっても悩んだんですね。全ての食材をオリジナルで書くのか、妥協するのか。で……結果、私は妥協しました(汗)。

 もちろん、全部本気で食材名から料理名まで付けようと思えば、やってやれないこともないのでしょうけれど。ですけど……これをガッツリやってしまうと、小説そのものが破綻しそうなのです……。

 例えば「リンゴ」が存在しないファンタジー世界で、「リンゴ」に近しい果物を説明しようとした場合。おばちゃんは多分、以下のように記述するでしょう。


 青々と茂る枝にぶら下がっているのは、見るからに美味しそうな赤くて丸い果実。それはこの世界で「アポー」と呼ばれる果実で、赤い皮の内には琥珀色の蜜がたっぷり詰まっているという。甘いだけではなく、爽やかな酸味も特徴とされ、生で食べるもよし、煮詰めて保存食にするもよし……って、知らんわッ! アポーッ‼︎


 ……と、まぁ。「リンゴ」をモデルにしたらしき果物「アポー」が初出した時に、こうした説明を加えないと、「アポー」が「リンゴ」に近い果実である事はおろか、そもそも果物かどうかさえ、読者さんには伝わりません。しかも……これが1つや2つなら、まだいいんですけど。……オリジナルの皮を被った食材全部に、これをやるんスカ? 毎回? 全種類? 多分、本編とは別に用語集や食材集が必要になりますよ、これ。ポケ◯ンの「オレンのみ」みたいに一発でイメージが分かるんなら、まだしも! ……と、言うことで、おばちゃんは自分の小説で意地を張るの、やめました。


 それでなくても、常々設定魔&説明魔な部分があって、ただでさえ文章長くなりがちなのに。その上で、食材までオリジナルに拘ったら、完結できるものもできなくなっちゃいます。


 と、まぁ、それはさておき。意地を張るのをやめたのはいいのですが、かと言って、現実世界の食材をファンタジー世界に持ち込んだら、それはそれで違和感が残るのも、拭えないのです。なので、最終的には「これは都合よく翻訳された作品なんだ。だから、こちら側の皆様にも分かるよう、翻訳したニポンゴーで書いている事にしよう!」……と、思い込む事にしました。ハイ、まごう事なき思考停止&現実逃避ですね。言われずとも、自覚しておりまする。


 そんなみっともない言い訳と妥協の果てに、私の小説には「サンドウィッチ」な軽食も登場しますし、アールグレイならぬ「アールナーシャ」なる怪しげな紅茶も存在することになりました。……もし、「サンドウィッチ」にツッコミが入った場合は、私の作り上げた世界にも「サンドウィッチ伯爵」が存在していた事にします。えぇ、ゴリ押します。

 だって、サンドウィッチはサンドウィッチだもん。いちいち「パンで卵やハムを挟んだ料理」なんて説明するのも馬鹿馬鹿しいですし、その前に「サンドウィッチ」で済むはずの料理に対して、「パン」「卵」「ハム」がそれぞれどんな代物なのかも説明しなければならなくなります。一発で済むものに対して、ここまでクドクド説明する必要はないと思いません? それ、本当に求められている内容でしょうか? そんな事を延々と説明するくらいなら、チャチャっと山場を用意してくれよ、が本音じゃなかろうか。まぁ、ガッツリ世界観を描写して、骨太なファンタジーを書きたい気分もありますけれど。「牛のフィレステーキ」じゃなくて「ケン◯ロスのフィレステーキ」……あっ、すみません。なんでもありません。


 ゲーム等ではモンスター等を狩って料理するものも沢山ありますけれど、それを小説でやってしまうと、視覚的な情報を補うための説明文が相当量必要になってしまいます。手っ取り早く読者さんにイメージを伝えるには、共通認識を利用するのも1つの手段だと思いますし、私自身も読者として小説を読む分にはそこはあまり気になりません。

 ……「リンゴ」を「アポー」と読み替えて説明されたところで、煩わしいだけですし。「アップルパイ」は美味しそうだけど、「アッポーパイ」は間抜けに聞こえますし。絶対、前者の方が美味しそうな気がする。「アッポーパイ」は食べると阿呆になりそう。


 えぇと……長々と変な主張を垂れ流して、すみません。

 おばちゃんが言いたいこととしましては、ですね。日本語で書かれている以上、小説のファンタジー世界に「リンゴ」を持ち込むのくらい、許容してもいいかなと思うのです。ここは都合よく、「今読んでいるのは、翻訳されているファンタジー小説なんだ」と思い込んでみる。これが本当のご都合主義だとも、思いますが。労力をかけなくて済むはずの説明に、文字数を割くくらいなら、しっかりとファンタジーならではの要素の説明を丁寧にした方がいいのではないか、と考えるのです。

 「ファイア!」って叫んだだけで、ポンポン火の玉が飛ぶような世界観で、「ファイア!」の原理が説明されていないのに、片や食材の説明はガッツリされてあったら、「ナニコレ?」ってなると思うんです。だったら、食材の説明をするよりも、その世界で「魔法がどんな存在なのか」を説明した方がよっぽどファンタジーっぽい。


 まぁ、食材どころか魔法やステータスなるものの概念すら説明されていないものも、往々にしてありますが。読者側も無知ではないのですから、それなりに解釈して楽しめればいいのではないかと思いますです。

 変なところに拘ると、楽しく読めなくなるし、楽しく書けなくなりますよ。

 一生懸命なのも、もちろん素敵なことですけれど。たまには、程よく肩の力を抜くのも大切です。折角、沢山の作品が読み放題なのですから、楽しんだ者勝ちなのです。変に拘るのは、世界を作り上げている作者側だけでいいのではないかと、ふと思った次第であります。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウバさんのエッセイが好きで、たまに読み返してはニヤニヤさせて頂いております。アッポーパイのくだりとか大好きです。確かに阿呆になっちゃいそう……! ファンタジーはあまり書いたことがないのですが…
[一言] 面白かったです。遅ればせながら。 清水義範の小説に「バールのようなもの」というのがあります。最後に全部「のようなもの」がついてしまうオチだったような気がします。 子供の「ってな〜に」に答えて…
[一言] 異世界サンドウィッチ問題ですね。 難しいですよね〜。
2021/11/25 20:44 退会済み
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