8話
まさか頭痛だけで十日近くも辛い目に遭うとは思わなかったです(´・ω・`)
「あ、あがぁ……」
私の盾でシールドバッシュをして男を吹っ飛ばした結果。
男は吹っ飛んで背面ヘッドスライディングで数メートル地面を滑って漸く止まった。
鎧は拉げて鼻と前歯は折れている。目を回してもいるみたいだし、これで何かしてくることもないだろう。後は衛兵に突き出して正当防衛で店から叩き出したとでも言えばいい。
「何事か」
出来ていた人集りが左右に綺麗に分かれて現れたのは……狸の置物?によく似たおじさんだった。側に二人程付き人を連れてきている。
「む? ディカルドじゃないか。何故こいつがこんなことに?」
付き人の一人が狸おじさんにひそひそと何かを伝えている。もう一人の付き人はディカルドと呼ばれた男を抱き起して何やら体の負傷状況を確認している。
「何? そこの小娘がこいつを? 本当かね? ……ふむ、そうか。」
抱き起していた付き人は用済みとばかりにディカルドを引きずって離れて行った。
「君ぃ。困るのだよ。うちの従業員をこんな風に使えなくされては。それにこれは些か過剰だと思うのだが?」
「一度追い出してもまだ抵抗しようとしましたので、無力化しました。文句は先程の男にどうぞ」
私がそう告げても男はニヤニヤとした顔をこちらに向け続けている。
何か企んでいるのだろうか?
「いや、彼はもう解雇するさ。これ程の騒ぎを起こしたのだ。責任は取らねばなるまい?」
「貴方あの人の上司でしょ? 部下がやったことは上司の責任でしょ?」
「勤務中にしでかした訳でもないし、こちらは全く関与しておりませんぞ? 個人の休暇中にしでかしたことなんぞに責任なんて持てませんぞ」
蜥蜴の尻尾切りか……。
「そうでしたか。では、その男はちゃんと衛兵に引き渡しをお願いします」
「勿論ですとも」
迷惑だったが、こちらの被害は精神的ダメージくらい。諦めるしかなさそう。
「では、私は宿の仕事に戻ります。ありがとうございました」
「待ちたまえ。そういう訳にもいかんのだよ」
狸おじさんは不気味な笑みを浮かべた。