7話
頭痛って治んないよねぇ。
「何だよ。飯はまだ来ないのか?」
男はテーブルに足を乗せてふんぞり返っている。そして、時々思い出したかの様にお店の中を見回している。
「出さないよ。貴方、迷惑だから今直ぐ出てってくれない?」
「あぁ? 俺は客! お前は従業員! いいから飯を出せよ!」
さっきから同じ事しか言わないなぁ。誰かにここの様子でも見てきてあわよくば店を続けられないように妨害するって感じかな。
「迷惑だって言ってるでしょ。出てって。貴方みたいな失礼な人は客ではないわ」
「客に向かって何だその態度は! 糞みたいな店だと思ったが、従業員も糞じゃねぇか! だったらこんな店無くなっても構わないよな?」
男は待ってましたと言わんばかりに剣を鞘から抜く。
鞘から抜ききった瞬間に私は行動に移す。
「『精巧な囮』」
魔法で作られた実体のない偽物をお店の入り口に出現させる。
「おらぁぁぁっああああぁぁぁぁ!?」
男は私の幻影に斬りかかって剣を空振り。そのまま転んで店の外へと転がっていった。
「くっそ……魔法使いかよ……。聞いてねぇぞ」
私は店を護るように背にして立ち、最も信頼している愛用の武具を取り出す。
「来たれ第七番魔導機構『銃剣』、第十番魔導機構『杭盾』」
何もない空間より魔導の光が現れそこから生み出されたのは剣と盾。
大人が両手でやっと持てそうな機械仕掛けの剣。
見た目は銃身の筒を片刃の剣で挟んだ感じ。銃身を保護する様に金属のプレートで覆われている。剣の柄は若干曲がっていて突き出した時に丁度銃の様に引き金を引ける。
そして私が二人くらい隠れられそうな巨大な盾。盾の裏側には畳まれた状態の杭が仕舞ってある。杭は射出してもいいし、盾を地面に固定したりも出来る。元はドラゴン等の大型の魔物を想定して作った物で、杭が魔物の体内に入ると遠隔で爆発させられるようになっている。
どちらもゲームの時に時間をかけて作った物だ。作ってからも強化して使い続けてきた愛用品。
私は片手で剣を振ったり盾を構えてみて感触を確かめる。
問題は無さそうだ。
「やるなら相手するけど……どうする?」
「どうせ見せかけだろ! テメェなんか怖かねぇ! 野郎ぶっくkrぐはっ!?」
何か全部言わせちゃいけない気がした。