008・改造(3)
愛莉は理不尽な扱いを受けたあるアメリカ人の囚人の話を思い出した。その人物はサミュエル・マッド医師といい、19世紀のアメリカ合衆国大統領だったリンカーンを暗殺した実行犯ジョン・ウィルクス・ブース一味を宿泊させ、治療を行ったとして、後に軍事裁判で終身刑を宣告されたという。逃亡を手助けしたとして暗殺者の一味とされたわけだが、それはまるで自分だと愛梨は思った。
愛莉が逮捕されたのは、国家機密漏えいに加担し深刻な国家的危機を招いたというものだったが、裁判中は自分がやったとされたことなのに、ほとんどすべてが国家機密だとして法廷で開示されず、まともな審理が行われないまま有罪にされてしまった。それも全身拘束刑という死刑にも等しい刑に! あんまりにも厳しい刑なので泣いてしまった!
「それでは、これから山村愛莉は法的に除籍されます。これから内臓処理を行い、生命維持システムの構築と外骨格の装着措置を行います。では、いいですね?」
柴田技師長の愛想もない声が措置室に響いていた。いいですね? といわれても反論できないじゃないのよ! そう反論したかったが、既に口蓋は大きく開けられ、体内に向けて改造マシーンが挿入されていたからだ。それと同時にインナースーツが本来の愛莉の皮膚組織と完全に融合したため、愛莉の身体はロボットを構成する材料でしかなかった。
改造マシーンから放出されたナノマシーンと改造に必要な物質によって、少女の身体#だった__・__#物質はロボットの骨格と内部動力、そして制御機構として変換されていった。インナースーツに覆われ見えなかったが愛莉の肉体は再構成されていった。筋肉組織は人工筋肉と同様な素材に、内臓は人工筋肉に稼働物質を供給するもに変えられていった。
また頭蓋骨に直接開けられた穴を通じて挿入された管からは、愛莉の脳細胞を電子素子に置き換える作業が行われた。それはいわゆる電脳化であった。電脳化された人間は、電子回路と同様になるので、簡単に書き換えができるような状態にされた! もはや愛莉にプライバシーなど存在しなかった!