007・改造(2)
その時、愛莉は思い知らされた。全身拘束刑は一部の凶悪犯しか執行されないと、司法省は宣伝していたし、扱いは酷くないともいっていたのに、実際はここまで屈辱的だった。これって、モノとして扱われるのに早く順応せよというものらしかった。モノはモノらしく扱われるから。
ハダカにされた愛莉は全身にクリームのようなモノを塗られたあと驚いた! 髪の毛も含め全身の体毛が抜けてしまったのだ! 大学生になって少し脱色したりパーマをかけた髪の毛もなくなってしまった! もう、人間ではなく自分はマネキンのような姿になったとしか想像できなかった。
もし、この光景を見たら誰もが非人道的な刑罰だと思う事だろう。一方で、ここまで酷い刑罰を受けるのだから、それ相応の犯罪者に違いない、因果応報だといって突き放されるかもしれなかった。かつての死刑囚は人を殺めたのだからそれ相応の死の罰を受けると主張されたように、人間で無くなるような刑罰を受けるのは極悪人だと。実際、柴田技師長以下この措置室にいたスタッフ全員がそれなりの凶悪な犯罪者だとおもっていた。でも愛莉は国家の機密を漏らすことを首謀していなかった、誰にも認められなかったが! 絶対誰かに嵌められたんだと確信していた。しかし、もう後戻りすることは出来なかった。
次にマネキンのようになった愛莉の全身を特殊なインナースーツが装着されていった。それは包帯のような形状をしていて、柴田技師長が指示しているガイノイド、これも元人間の囚人かもしれないが、そいつらによってミイラに包帯を巻くようにして包まれてしまった。
まかれた包帯は熱を発しながら愛莉の皮膚に融合していった。そのとき、全身が熱くて泣く叫びたかったが。もう感情を表現するように身体が反応することは無くなった。身体は愛莉のものではなくなっていた。同級生に暗号を解除するのを頼まれただけなのに、ここまでの仕打ちをうけるなんて、理不尽だと憤りたかったが全ては手遅れだった。それなりに可愛らし少女だった愛莉はこの世の中からいなくなってしまったのだ。いまいるのは愛莉の抜け殻であった。
この時、愛梨の身体は目鼻口そして下腹部以外がゴムのような素材に覆われ、ゴム人形のようになった。それはもう人間ではなくなっていた。人間の形をしたなにかであった。猛烈な熱気に蒸されるような感覚とともに、全身が溶けてしまう恐怖を感じていた。