030・依頼
エリーは真由美をエスコートして丹下教授の元に連れて行った。入学したばかりの真由美が体験で研究所に行くのは異例な事だった。通常、一年生が入るとすれば特別成績が良くないといけないからだ。高校時代、成績が常に中の下ぐらいだった彼女の事を一番知っている愛莉がそう思っていた。それにしても、愛莉として接することが出来ないのがもどかしかった。
「こちらが丹下犯罪学研究所です。お父様には色々とお世話になっております。何度もミステリー研究会でお会いしておりますから、あなたの事を良く聞いております」
丹下教授は真由美をそう言って歓迎していた。やはりこれはコネなんだと分かった。でも何故、犯罪研究所なんかという疑問があった。
「はじめまして、教授。安養寺真由美です。父から伺っております、古今東西のミステリーにも通じておられるそうでして。早速ですが依頼しても良いですね? メールで送ったのですが読んでいただけましたか?」
真由美はそういって教授に手渡したのは、愛莉の写真だった!
「実は、この人を探しています。理工学部の学生だった山村愛莉さんです。一月に逮捕されてから全くの行方不明でして、父がいろんな伝手を使っても見つけられなかったのです。どうも”闇の司法部”の・・」
そこまで言ったところで、丹下教授は真由美の口に手を当て、周囲を警戒しながらエリーにカーテンを引くように指示して、膨大な蔵書がある書架の中央に移動した。
「あなたは、その”闇の司法部”の事を知っているのですね。安養寺君も娘さんに話しているとはね、今回の依頼ってとても危険なのですよ。なんだって”闇の司法部”の正体は、ここ帝央のOBとOGたちなんですからね。ここ法学部の!」
丹下教授は小さな声で言った。愛莉は初めて聞くことに驚いていた。それが自分を全身拘束刑にした連中なのかもしれないと。