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冤罪! 全身拘束刑に処せられた少女  作者: ジャン・幸田
第二章・学園にガイノイドとして戻る
29/37

029・接近

 事件当時、愛莉は今の真由美と同じように、理工学部の「先端技術研究所」に体験入所していた。そこで自律型思考AIの開発を手伝っていた。そのAIはゼロから天才的な人間のような創造性あふれた頭脳を獲得させようというものであった。いわば人工的にアインシュタインやホーキングのような天才的科学者を創造する野心的なものだった。目的としては与えられた情報の計算だけが取り柄の従来の超高速スーパーコンピューターでは対応できない、閃きを持たせ、それによって発明や発見の速度を加速させようという物だった。


 その開発に愛莉が参加したのだが、それは彼女の知能指数が192と判定されたためだ。いままで愛莉は生きていくために奨学金や学費免除の資格を得るために学力を使ってきたが、人類の未来のためだと言われ半ば強制的に研究所に入れられてしまった。そのとき、実験と称してやらされたのが、おそらく国防省のデータベースの暗号キーの解除だったようだ。そのとき愛梨はそれが意味することを認識できなかった。


 そして、一週間後。ネットのニュースを見ると情報流出の一件ばっかりになって、すぐ特捜班に連行されてしまい、全身拘束刑に処せられてしまった。


 そんな忌々しい理工学部の前では、一種の見学ツアーの受付をしていた。それは理工学部およびスポンサーになっている軍産複合体の宣伝活動だった。その中の集団にアイリを真由美が見つけてしまった。でも、いま理工学部の面々に存在は知られるのはまずいと判断した愛莉は早くエリーの機体と共に真由美を遠ざけなければならなかった。それで、少し速度を上げた。しかし、真由美が車椅子の横にかけていたバックが横を通り過ぎようとした中年男性に接触した。


 「いまぶつかったぞ! 気を付けなさい! そこの・・・」


 その男の目線は即座にエリーへと移っていた。その男を愛莉は知っていた。その男こそ研究所に無理矢理入れた張本人だったからだ。そう板倉秀樹教授だった!


 「ちょっとまて! 君は?」 そう尋ねられて真由美の方が先に口を出した。カバンをぶつけたのは自分だから当たり前であったが。


 「ごめんなさい。私は法学部の安養寺真由美です。カバンを良いようにしていませんでした。お怪我はありませんか?」 真由美にしては珍しい謝罪のことばであったが、板倉教授は軽く挨拶すると、ガイノイドの方を指さした。


 「そこのガイノイド! 所属はどこだ? 君は機械なんだから気を付けろ!」


 「申し訳ございませんでした。私は丹下犯罪学研究所所属のガイノイドのエリーです。三日前に配属されました」


 「丹下先生のところか? 先生もいろいろと引退前に忙しいからロボット寄越せと言っていたけどな、あんたが配属されたのか? それにしても奇妙だな。うちのアイリと同型機なのか? めずらしいなあと思っただけの事さ。まあ、行きなさい!」


 そういって板倉教授は解放してくれたが、その視線に疑惑のようなモノを抱いていると感じたのは、きっと気のせいでないと愛莉はおもった。


 そもそもアイリとエリーが同型なのは、外骨格の製造を急いだためだという。ダミーのアイリの方を製造するために、愛莉の改造データを元に秘密裡に在庫品を組み合わせたのだという。実際のところ新造したのは電脳部分で、法的には死亡した人間の脳漿を基にした禁制品を組み合わせたのだという。そして神原瑛梨は架空の人間だと思ったら、実在のハッカーで本物はとある場所で匿われているとのことだ。だから、理工学部に潜入させたアイリがバレるのも時間の問題だった。


 このとき、坂倉教授らに入れ替わっているのが、ばれてしまう瞬間が早まったんだと愛莉は自覚していた。

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