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冤罪! 全身拘束刑に処せられた少女  作者: ジャン・幸田
第二章・学園にガイノイドとして戻る
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028・遭遇

 真由美の車椅子をエリー(愛莉)は押していた。彼女が愛用している車椅子は自走可能であったが、ゆっくりと案内するために手動にしたのだ。それは高校時代、よく愛莉がしていたことだった。


 「エリーさんといったわね。なんだか押し方優しいわね」


 真由美は満足な表情をしていた。実は真由美は結構わがままな性格で、大抵の同級生には強く当たる事もおおかったが、何故か愛莉にだけはなついていた。それには自分も気づいていたようであった。


 「ありがとうございます」


 「なんだか、お姉ちゃんに押してもらっているみたい」


 「真由美さんにはお姉さんがおられるのですか?」


 その答えは愛莉は知っているが、今はエリーとして受け答えしていた。


 「そうよ! でもね、最近連絡できていないのよ! 学校に聞いても何も教えてもらえないし、つながらないしね・・・」


 そう、山村愛莉は表向きは逮捕後行方不明になっているようだった。マスコミ報道も逮捕については氏名を公表していないので、誰にも知られずに社会から抹殺された形になっていた。愛莉の安否の問い合わせをしたのは安養寺#匡仁__ただひと__#、真由美の父だけだった。


 「そうですか、早くお会い出来たらいいですね」


 エリーの言葉の中に、私はここにいるのよ、真由美ちゃん! という心が籠っていたが、それを伝える事は出来なかった。今の時点では正体をバラせなかったからだ。危険な目に遭う可能性があったし。


 一人と一体はオリエンテーションが行われた会場を出て、通称・帝央通りを進んでいた。その通りの真ん中に学生課などが入る高層ビルが中央にある巨大なロータリーがあった。そのロータリーの脇に最近建築されたのが理工学部新館だった。なんでも、バイオロイドと呼ばれる一種の人造人間で巨万の利益を得たOBの寄付で設置されたもので、丘陵地帯に25階もある高層ビルであった。そこに一月まで通っていたのが愛莉だった。いまは自由に動くことが出来ない指示に従うだけのガイノイドとして通り過ぎようとしていた。


 「ねえ、ここ理工学部よね? あたし、一所懸命頑張ったんだけど合格できなかったのよ! まあ、私の学力じゃ無理よね。でもなんとか法学部に補欠の補欠で入れたから・・・お姉さんに会えるわね、そのうちに」


 真由美の寂しそうな声にエリーの中の愛莉は抱きしめたくなっていたが、それは出来なかった。はやく元の愛莉に戻りたいと思ったが、最大の問題は、理工学部の中にあった! きっと、あそこに黒幕がいると! 本当ならアイリとして活動すればいいのだけど、それって飛んで火にいる夏の虫そのままなので、出来るはずはなかった。だから、今はダミーのアイリがいるはずだった。


 「ねえ、エリー。あなたって同型ってあるの? あそこに似たのがいるけど、本当にそっくりだね」


 真由美が指さした先にガイノイドが何体もいたが、そこにアイリもいた!


 「似てますね! 私たちガイノイドは重ならないようにデザインされているのですが、たまにはこういう事もあるようです」


 エリーはそう答えていたが、愛莉は少し焦っていた! バレるんじゃないだろうかと! 黒幕に!



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