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冤罪! 全身拘束刑に処せられた少女  作者: ジャン・幸田
第一章・全身拘束刑に処せられた少女
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017・遠のく意識

 昔、ローマ時代の時の事だったと思うが、一家全員処刑される場合、死刑囚の中に処女がいた場合、処女の血が流れるのは不吉なことであるとして、看守によって春を奪われるという事があったという。なぜ、そんなことを思い出したのかといえば、アイリの素体にされた愛莉はまだ男性と付き合った事のないヴァージンだったからだ。だから男の手を繋いだことはなかった。まあ高校まで女子校に通っていたから当然であったが。


 なのにアイリからすれば、淳司はいくらガイノイドになっているとはいえ、胸を触るなんて嫌悪感でしかなかった。まあ今の扱いは道具なのだから当然といえば当然であるとも認識していた。全身拘束刑は刑務所に収監しないかわりに、犯罪者をロボットの機体の中に閉じ込め、働かせるものである。身体も精神も24時間365日監視され、そのために肉体改造まで行われるのであるが、それは機械と融合することであった。


 全身拘束刑を執行された時、愛莉は呼吸器官は液体呼吸システムに換装され、消化器は効率の良い有機物交換システムに、生殖器は事実上ホルモン分泌機能だけにされ、そして神経系統は電子素子に変換されていた。そのうえ、人間としての皮膚は外骨格と融合しているので、万が一外骨格を外したら、見えるのは人体由来の特殊有機物質のパーツであった。そう、もはや人間らしいものは消失しているのだ。


 「いまさら冤罪なのがわかったというのなら、早く元通りの身体にしてもらえない? こんな身体で・・・十年も過ごすなんて嫌よ!」


 アイリはそう言って、あることを思い出した。たしか裁判中に弁護士が罪を認めましょう、そして全身拘束刑を回避しましょう、もし全身拘束刑でロボットにされたら刑期が終わっても必ずしも元の身体に戻れる保証はないと言われた事を。でも、訳も分からないうちに罪を認める事なんか出来ないといって拒否した結果が今の姿だった。


 「愛莉ちゃん、それはそう思うよね。でもな、冤罪だとしてもこの事件の闇は深いんだよ! 裁判所も検事もそして首謀者も全てがグルなんだよ! 俺のクライアントによれば別の案件が暴露されないように仕組んだとの事だよ。ようはスキャンダルをでっちあげたわけさ。でも、でっちあげるにも設定が必要だから、君を人身御供にしたわけさ!」


 淳司はそういって、タブレットであるファイルを示してからアイリの電脳に転送した。それは、裁判で国家機密に指定されているとして開示してくれなかった。裁判所に提出されたデータだった。それにアイリは愕然とした!


 「何よこれ? 中学生並みの作文じゃないのよ! こんなのが国家機密ってわけなの? まるでなっていないわよ!」


 そのデータは愛莉だったころの彼女でも分かるぐらい稚拙なもので、裁判官が納得したのが不思議な代物だった。それによると、愛莉が情報を取得したのか簡単に出来たとあったが、具体的な実行行為など全くなかった。


 「ひどいよ! こんなのでガイノイドにされたというわけなの? まだ男の子と手を繋いだこともないしデートに行った事もないし・・・まだ・・・こんな姿にされるのなんて、それってひどすぎるじゃないのよ! 可哀そうな愛莉! 」


 アイリは泣きたいと思ったが、ガイノイドには感情はあっても涙腺機能なんて存在しないので生物的な表現方法などなかった。ただ言葉でしか言い表せられなかった。それにしても、この淳司という男、なんで国家機密とされたデータを取得できるのかが不思議であった。もしかするとヤバい筋の人物かもしれなかった。


 「まあ、そういうことだよ愛莉ちゃん。君を全身拘束刑から解放するには三つの方法があるんだ。これからいうけど、出来れば最後に言うのに同意してもらいたいのだが、いいかな?」


 そういって、淳司が手に持った何かをかざすと、アイリの意識レベルが低下していった・・・


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