016・出会い
「とりあえず成功だよな! おかえり愛莉ちゃん。これはな、さるお方に頼まれたんだな。おーっと、そこの柴田技師長! これからやることは他言無用にお願いしますよ!
これであんたも共犯なんだからね、全身拘束刑の受刑者の自我を再構成するだなんて、本当は司法長官なんかのややこしい許可がいるのを、そこんところすっ飛ばしてやっているんだからね。まあ、あんたは自分が全身拘束刑を受けたいと思っているようだけど、俺はごめんこうむりたいからね。とりあえず、録画を切断しているよな? あとで辻褄が合うようにしといてくれよね!」
どうも淳司がやっている行為は違法のようだった。でもアイリのなかにいる愛莉は少し人間らしい感情が戻ってきたことは嬉しかった、でも身体はガイノイドのままだったけど。柴田技師長が小さくうなずくとアイリの肩に軽く手を乗せて、淳司は用件を言い始めた。
「愛莉ちゃん、君はその姿に満足しているはずだよな。それがプログラムのはずだからね。でもな、そんな姿にされたのが冤罪だったと知ったらどう思う?」するとアイリいや愛莉は声を荒立てた。
「冤罪? それはあたいが捜査中も裁判中もずっと主張していたのよ! でも、誰も聞いてくれなかったんじゃないのよ! こんな機械にされてから、やっぱ冤罪でした、ごめんなさい! なんていわれても困るしかないわよ!」
そうやって淳司が肩に乗せた手を振り払おうとしたら、反対に手を掴まれた。その力はいくらパワーがセーブされているとはいえ、機械よりも強そうであった。
「まあまあ、怒りなさんなよ! 怒りはごもっとも! それが分かったのは君の電脳化された記憶からサルベージされた情報によってからだから。そうそう、俺に協力してもらわんと、愛莉ちゃんの人格は消去されるからね! だから俺がこれからいう提案を考えてもらえないか? 悪い話じゃないからね」
そういって淳司はあろうことかアイリの胸部の膨らみに手をかけた! それって人間だったらセクハラよ! といいたかった愛莉であった。でも、その胸はドームのような形状で、固く崩れないものであった。